国家賠償請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30ワ1640
- 事件名
- 国家賠償請求事件
- 裁判所
- 神戸地方裁判所
- 裁判年月日
- 2021年8月3日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 小池明善、三浦康子、山口大輔
AI概要
【事案の概要】 旧優生保護法(昭和23年法律第156号)に基づく不妊手術(優生手術)を受けさせられたとする原告ら5名が、国に対し国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案である。原告1(男性・聴覚障害1級)は昭和43年頃、結婚直前に母親に連れられた医院で何の説明もなく精管結紮手術を受けた。原告4(女性・聴覚障害1級)は昭和35年頃、妊娠後に母親に連れられた病院で中絶手術とともに不妊手術を受けた。原告5(女性・脳性小児麻痺による障害1級)は昭和43年頃、幼少期に祖母に連れられた病院で子宮摘出手術を受けた。原告2は原告1の配偶者、原告3は原告4の配偶者であり、いずれも配偶者との間に子をもうける機会を奪われたとして提訴した。原告らはそれぞれ慰謝料3000万円の一部である1000万円と弁護士費用の合計1100万円を請求した。 【争点】 主な争点は、(1)旧優生保護法の違憲性、(2)国会議員の立法不作為の違法性、(3)厚生大臣の優生手術推進行為の違法性、(4)厚生大臣及び厚生労働大臣の不作為の違法性、(5)民法724条後段(除斥期間)の適用の可否である。特に、旧優生保護法が憲法13条・14条1項・24条2項に違反するか、また仮に損害賠償請求権が発生していたとしても不法行為時から20年の除斥期間が経過しているかが中心的争点となった。 【判旨】 裁判所は、旧優生保護法の優生条項について、特定の障害や疾患を有する者を「不良」とみなし生殖機能を回復不可能にさせる手術を定めるものであり、その立法目的は極めて非人道的で個人の尊重を基本原理とする日本国憲法の理念に反することが明らかであるとして、憲法13条(幸福追求権・自己決定権の侵害)、14条1項(不合理な差別的取扱い)、24条2項(個人の尊厳の著しい侵害)に違反すると判断した。また、国会議員が優生条項を速やかに改廃すべきであったにもかかわらず平成8年改正まで長期間改廃しなかったことは国賠法上違法であるとし、原告らの損害賠償請求権の発生を認めた。しかし、民法724条後段の20年の除斥期間について、本件各手術が行われた昭和35年ないし昭和43年から20年が経過しており、損害賠償請求権は法律上当然に消滅したと判断した。原告らの信義則違反・権利濫用の主張、憲法17条違反の主張、国際人権法違反の主張もいずれも退けられ、請求は全て棄却された。なお、裁判所は付言として、旧優生保護法の優生条項が違憲であることが明白であるにもかかわらず半世紀にわたり存続し個人の尊厳が著しく侵害されてきた事実を真摯に受け止め、被害者への必要かつ適切な措置と障害者への偏見・差別解消のための積極的な施策が講じられることへの期待を述べた。