AI概要
【事案の概要】 著名な児童文学作家Gの著作権は、Gの死後、その妻Iが管理し、Iの死後は次男Hが他のきょうだい(E、被告B、被告C)から委託を受けて共有著作権行使の代表者として管理を行っていた。著作権は4人のきょうだいが各4分の1の割合で準共有していた。Hは「G著作権に関わる覚え書」を作成し、きょうだい全員が押印していた。同覚え書には、Hが相続できない状態になったときは原告(Hの子)がHの全ての権利を相続すること、遺族代表には事務手数料として年間総収入額の5%を支払うこと等が記載されていた。Hの死亡後、原告が事実上著作権管理を引き継いだが、被告ら(Eの子である被告Dを含む共有者側)との間で、著作権収益の分配方法や管理権限の帰属をめぐり紛争が生じた。本訴は、原告が共有持分の確認と共有著作権行使の代表者の地位の確認を求めた事案であり、反訴は、被告らが原告に対し、著作権収益から不当に控除された経費等の不当利得返還を求めた事案である。 【争点】 (1) 原告が著作権法65条4項・64条3項所定の共有著作権行使の代表者の地位にあるか。原告は、覚え書の記載がHの死亡を停止条件として原告を代表者に選任する第三者のためにする契約であると主張した。 (2) Hが著作権収益の分配にあたり総収入の5%の管理手数料に加えて経費を控除することが許されていたか。被告らは5%に経費が含まれると主張した。 (3) H死亡後の原告による著作権管理が事務管理にとどまるか、また原告が控除した各費目(地代家賃、旅費交通費、接待交際費、管理手数料等)が不当利得に当たるか。 【判旨】 裁判所は、まず原告の著作権共有持分(4分の1)の確認請求については、訴訟前の交渉で被告ら側が原告の持分を否定する文書を送付していた経緯から確認の利益を認め、請求を認容した。 代表者の地位については、覚え書の第1項は、著作権の共有持分を次に相続する者をあらかじめ特定することに主眼があり、H死亡後の代表者選任を定めたものとは解釈できないと判断した。覚え書作成時に当事者間で特段の話合いがなかったこと、Hが覚え書の存在を原告に知らせていなかったこと、Hの公正証書遺言の付言事項が代表者未定を前提とした記載であったこと等を総合考慮し、原告主張の合意は成立していないとして請求を棄却した。 経費控除については、H存命中は、明細書の送付に対しきょうだいが長年異議を述べなかったことから、5%の報酬に加え経費控除も合意されていたと認定した。ロシア旅行費用16万円についても、Gの顕彰活動としての側面を認め、不当利得には当たらないとした。 H死亡後については、原告の管理は事務管理(民法697条以下)であると認定し、控除できる費用は有益費に限られるとした。個別費目の検討として、地代家賃・消耗品費・雑費は有益費と認め、旅費交通費の20%、接待交際費の70%は不当利得と認定した。管理手数料(5%)については、原告が管理を放棄した場合の損失や第三者委託時の費用等を考慮し、50%の限度で不当利得と認めた。結論として、被告ら1人あたり、平成28〜30年度分につき3万9682円、平成31〜令和2年度分につき13万5401円の不当利得返還請求を認容した。