特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、体育館等の円弧状の天井部を有する屋内でネット等の吊張体を吊り張りする装置に関する特許権(特許第3598508号、発明の名称「屋内のネット等の吊張体の吊張り方法,及びその装置」)を有する株式会社である。原告は、被告テイエヌネットが被告仲本建設から請け負った沖縄市の屋内運動場に設置した電動昇降式ネット吊張り装置(被告製品1)、及び被告明城建設から請け負った伊江村の屋内運動場に設置した同装置(被告製品2)が、いずれも原告の本件特許権を侵害すると主張した。原告は、被告テイエヌネットに対する被告製品1の製造・譲渡の差止め、被告テイエヌネット及び被告仲本建設に対する連帯での損害賠償約1153万円、並びに被告テイエヌネット及び被告明城建設に対する連帯での損害賠償約1187万円を請求した。本件特許の請求項2に係る発明(本件発明)は、円弧状天井部に沿って設けられたウインチワイヤー等から構成される吊張り装置において、天頂部又はこれに最も近接した基準吊り上げワイヤーとの取付位置の高さ方向の距離に対応した長さを調整するための「調整手段」が設けられていることを特徴とするものである。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件B2「ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチ」及び構成要件Cの「調整手段」の充足性)、(2)被告製品2が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件Cの充足性)、(3)本件特許の無効理由(明確性要件違反、サポート要件違反、実施可能要件違反、進歩性欠如、発明非該当)の有無であった。特に、構成要件Cの「調整手段」の解釈が中心的争点となった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず構成要件B2のウインチについて、特許請求の範囲及び明細書の記載から、エンドレスウインチに限定されず巻取式ウインチも含まれると判断した。次に構成要件Cの「調整手段」について、本件発明の技術的意義に照らし、天頂部の基準吊り上げワイヤーとの取付位置の高さの差(本件差分)を認識した上で、これを基準として合うように吊り上げワイヤー等の長さをあらかじめ変更するための手段であると解釈した。単に何らかの長さ変更が可能な構成があるだけでは足りず、本件差分を基準とした調整を行う構成でなければならないとした。被告製品1の連結材(シャックル、リングキャッチ、チェーン)は、ワイヤーとバトンを連結する通常の部材にすぎず、本件差分を基準とした長さの調整は行われていないことから、調整手段に該当しないと判断した。被告製品2のワイヤークリップについても同様に、通常のワイヤー係止手段にすぎず、本件差分を基準とした長さの変更を行う構成とは認められないとして、調整手段に該当しないと判断した。以上から、被告製品1・2はいずれも構成要件Cを充足せず本件発明の技術的範囲に属しないとして、その余の争点を判断するまでもなく原告の請求をすべて棄却した。