商標権侵害行為差止等及び不正競争行為差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 雑誌「現代の理論」は、昭和34年に月刊誌として創刊された歴史ある論壇誌である。第1次(昭和34年)、第2次(昭和39年〜平成元年)を経て、平成16年に第3次として季刊誌で再刊された。第3次の発行主体は任意団体「言論NPO・現代の理論」(後に被控訴人NPOとして法人化)であり、編集は「現代の理論編集委員会」が担った。しかし、財政難から平成19年に出版権が明石書店に譲渡され、編集委員会メンバーの大半がNPOの理事を辞任して明石書店の委託で編集を継続したが、平成24年に終刊となった。 その後、元編集委員である控訴人Xらは平成26年から「現代の理論」季刊電子版をウェブ上で無料配信し、一方、被控訴人NPOも平成28年に「現代の理論」の題号で雑誌を再刊した。控訴人Xは被控訴人NPOの再刊を知り、平成28年4月に「現代の理論」の商標登録出願を行い、平成29年9月に商標権の設定登録を受けた。 本件は、控訴人X及び控訴人編集委員会が、被控訴人NPO及び被控訴人同時代社に対し、「現代の理論」という標章を付した出版物の販売が、当事者間の合意違反、商標権侵害又は不正競争行為に当たるとして、差止め・廃棄及び損害賠償を求めた事案の控訴審である。原審は控訴人編集委員会の訴えを当事者能力なしとして却下し、控訴人Xの請求を権利濫用として棄却した。 【争点】 主な争点は、(1)控訴人編集委員会の権利能力なき社団としての当事者能力の有無、(2)被控訴人NPOが「現代の理論」名称の出版物を発行しない旨の合意の成否、(3)原告商標の登録に係る無効の抗弁(商標法4条1項8号・15号・19号)の成否、(4)被控訴人NPOの先使用権の成否、(5)控訴人Xによる商標権行使が権利濫用に当たるか、である。 【判旨】 知財高裁は、控訴人Xの控訴を一部認容し、原判決を変更した。 まず、控訴人編集委員会について、第3次雑誌の当初の編集委員会、明石書店委託時の編集委員会、原告出版物の編集委員会は、メンバーの重複があっても組織としての連続性がなく、総会も開催されておらず規約上の決議事項が決議された証拠もないとして、権利能力なき社団とは認められないと判断し、控訴人編集委員会の訴えを却下した。 控訴人Xと被控訴人NPO間の合意については、合意書等の証拠がなく、被控訴人NPOが一時期「現代の理論」の題号を使用しなかった事実のみでは合意の成立は認められないとした。 商標の無効の抗弁については、「現代の理論」は被控訴人NPOの著名な略称に該当せず(4条1項8号)、被控訴人NPOの業務に係る商品等と混同を生ずるおそれのある商標にも該当せず(同15号)、需要者間で広く認識されていたとも認められない(同19号)として、いずれも排斥した。先使用権についても、出版権譲渡後7年以上標章を使用しておらず継続使用の要件を欠くとして否定した。 権利濫用の主張については、「現代の理論」が被控訴人NPOの略称として周知であったとは認められず、控訴人Xが原告出版物に使用する商標の登録出願を行うことに不正の目的があったとも認められないとして退けた。 その上で、被控訴人らによる被告出版物の販売は原告商標権の侵害に当たるとし、商標法38条3項に基づく使用料相当額として、売上高の3%に相当する被告出版物1につき12万円、被告出版物2につき14万4000円の損害賠償を認容した。