AI概要
【事案の概要】 平成31年1月、福岡市の岸壁に係留された貨物船(ロールオン・ロールオフ船)の船内で、コンテナの荷積み作業中に発生した死亡事故の事案である。被告人は運転手として、コンテナシャーシを連結した大型トレーラーを運転し、誘導員である被害者(当時20歳)の笛の合図に従いながら船内のBデッキで後退進行していた。Bデッキは全長132m、横幅24.5mで、白線により8列の車列が区分されていた。荷積み予定位置は最も左舷側の車列上で、後方・右舷側にはそれぞれ別のコンテナシャーシが、左舷側には船壁があり、右方コンテナシャーシと船壁の間の距離は最短3.7mという狭い空間であった。被告人は後退進行中、右隣のコンテナの先端と自車のコンテナの先端をそろえることに気を取られ、誘導員である被害者の動静確認を怠り、被害者の停止の笛の合図に従わずに漫然と時速約3kmで後退を続けた結果、本件コンテナシャーシと後方コンテナシャーシの間に被害者を挟んで強圧し、出血性ショックにより死亡させた。 【争点】 主な争点は、(1)被告人が被害者の停止の笛の合図に従わずに後退を続けたか、(2)被告人の捜査段階の自白の信用性、(3)本件事故の予見可能性、(4)被告人の注意義務違反の有無であった。被告人は公判で、被害者の笛の合図は通常どおりであり停止の合図に従って停止したと主張した。弁護人は、被害者が自ら後退中の車両後方に立ち入ったもので、被告人には事故の予見可能性がなく注意義務を負わないと主張した。また、捜査段階の自白は警察官の威迫・誘導によるもので信用できないとも主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、現場に居合わせた作業員Z1の供述を信用できると判断した。Z1は、停止の笛の合図があったのに本件トレーラーが後退を続け、その後聞きなれない笛の音がして停止したと具体的に供述しており、速度チャート等の客観証拠とも矛盾しなかった。被告人の検察官に対する自白も、Z1供述や実況見分調書と整合し信用できるとした。予見可能性については、事故現場が三方をコンテナシャーシや船壁に囲まれた狭い空間であること、誘導員は停止位置付近で後退する大型トレーラーに接近することが予定されていたこと、転倒等により後方に入る可能性があったこと等から、被告人には事故の予見可能性があったと認定した。注意義務についても、周囲にいる人の安全を確認しながら運転することは運転者の基本的義務であり、誘導員の指示に従うべきことも厳しく指導されていたとして、義務違反を認めた。量刑では、被告人が運転前に飲酒して基準値を上回るアルコールを保有していたことを道義的に厳しく非難する一方、被害者も後退中の車両後方に入るという指導に反する行為をしていたことを考慮し、禁錮2年6月・執行猶予5年を言い渡した。