AI概要
【事案の概要】 本件は、土木・建築工事の請負等を目的とする原告(建設会社)が、学校法人Xから平成27年12月頃に受注した私立小学校の新築工事に関し、Xの理事長であった被告A及びその妻の被告Bに対し、共同不法行為(詐欺)に基づく損害賠償として1億円の支払を求めた事案である。 Xは大阪府豊中市の国有地上に私立小学校の開設を計画し、原告との間で請負契約を締結した。この契約をめぐっては、報酬額を15億5520万円とする契約書(15億契約書)と、私学審議会提出用に7億5600万円とする契約書(7億契約書)の2通が作成されたほか、補助金申請用に23億8464万円とする契約書も存在した。原告は工事の大部分を完成させたが、平成29年2月以降、国有地の売却価格の廉価性や補助金受給の不正疑惑等が社会問題化し、Xは同年3月に小学校の設置許可申請を取り下げ、同年4月に民事再生手続が開始された。原告は、被告Aが契約締結時に「工事代金の半分は私学助成金で支払う」と実際には存在しない助成金の支給を告げて原告を欺罔したと主張した。 【争点】 (1) 請負契約の報酬額が15億5520万円か7億5600万円か、(2) 被告Aの欺罔行為及び詐欺の故意の有無、(3) 被告Bの共同不法行為の成否、(4) 原告の損害額が争われた。 【判旨】 裁判所は、請負契約の報酬額について、15億契約書・覚書の記載内容、証人らの証言の一致、Xが15億契約書の支払予定に従い実際に報酬の一部を支払っていた事実、再生手続における管財人の認否等から、15億5520万円と認定した。被告らの「7億5600万円が正式な報酬額である」との主張は、被告A自身が15億契約書に押印したことを認めつつ曖昧な供述に終始していること等から排斥した。 しかし、被告Aの欺罔行為については、同人が契約締結時に「私学助成金で支払う」と虚偽の事実を告げたことは認めたものの、Xの契約締結時の資力(総資産約11億6700万円、りそな銀行の10億円融資枠、補助金約2億円の交付見込み等)に照らせば、報酬を支払う能力がなかったとは評価できないとした。また、被告Aは長年の希望であった小学校開校を切望しており、報酬を支払わないまま学校経営を続けることを想定していたとみるのは不合理であるとして、支払意思がなかったとも認められないと判断した。私学助成金に関する虚偽の発言は、報酬の支払をより確実にするための方便であったにとどまり、報酬を支払わずに建設工事を騙取する意図でなされたものとは評価できないとした。 以上から、被告Aの詐欺は成立せず、被告Bの共同不法行為もその前提を欠くとして、原告の請求をいずれも棄却した。