債務不存在確認請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告ら11名は、いずれもP2P方式のファイル共有ソフト「BitTorrent」を利用していた者である。被告は、アダルト動画の制作・販売等を目的とする株式会社であり、本件著作物(アダルト動画)の著作権者である。被告は、平成30年6月に内部調査を行い、BitTorrentを通じて本件著作物の動画ファイルの送受信を行っている者のIPアドレスを特定した上、プロバイダ各社に対し発信者情報の開示請求を行い、原告らの氏名等の開示を受けた。被告は、令和元年10月、原告らに対し、著作権侵害を理由にそれぞれ数千万円から1億円超の損害賠償を請求する通知書を送付した。本件は、原告らが被告に対し、著作権侵害に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求めた債務不存在確認訴訟である。 【争点】 主な争点は、(1)BitTorrentの利用による著作権侵害の成否(送信可能化権侵害・共同不法行為の成立)、(2)共同不法行為に基づく損害の範囲(原告らが責任を負うべきダウンロード数の算定方法)、(3)関連共同性が弱いことを理由とする減免責の可否、の3点である。原告らは、個々のピース(ファイルの断片)には著作物としての価値がなく著作権侵害に当たらないこと、送信可能化の主体は原告らではないこと、ダウンロード数の立証が不十分であることなどを主張した。 【判旨】 裁判所は、原告11名のうち、IPアドレスに係るハッシュが特定できない原告X5及び原告X11についてはダウンロードの事実を認定できないとして、この2名の債務不存在を確認した。その余の原告X1ら9名については、BitTorrentの仕組み上、ダウンロードしたファイルのピースを同時にアップロード可能な状態に置くことになるところ、原告X1らはこの仕組みを十分に理解した上で利用したものと認められるとして、他のユーザーとの共同不法行為により被告の送信可能化権を侵害したと判断した。損害の範囲については、原告X1らがBitTorrentを利用開始する前に生じた損害まで責任を負う根拠はないとし、各原告がアップロード可能な状態に置いていた期間中のダウンロード数に限定した。販売価格は、DVD・Blu-ray価格ではなくダウンロード・ストリーミング販売価格(通常版980円、HD版1270円)の38%(被告の取り分)を基礎とすべきとし、各原告の損害賠償額を1万6726円から9万4345円の範囲で認定した。関連共同性が弱いことを理由とする減免責の主張は排斥された。