障害者投票権確認等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 脳性麻痺により両上肢に障害を有し、自ら投票用紙に候補者の氏名を記載(自書)することができない控訴人が、公職選挙法48条2項の代理投票制度をめぐって国を相手に提訴した事案である。平成25年の公職選挙法改正により、代理投票の補助者は「投票所の事務に従事する者」(投票事務従事者)に限定されることとなった。改正前は投票管理者が補助者を選任する際、選挙人が希望するヘルパーや親族等を補助者とする運用の余地があったが、改正後はそれが認められなくなった。控訴人は、自書できない選挙人が見知らぬ投票事務従事者に投票先を告げなければならないのは、憲法が保障する秘密投票権の侵害であると主張し、(1)自ら希望する者を補助者として投票できる地位の確認と、(2)違憲な立法行為及び立法不作為を理由とする国家賠償110万円の支払を求めた。原審(大阪地裁)は控訴人の請求をいずれも棄却し、控訴人が控訴した。 【争点】 (1) 確認請求に係る訴えの適法性(法律上の争訟性・確認の利益の有無) (2) 改正後公選法48条2項が、秘密投票を保障する憲法15条1項・4項、43条及び44条に違反するか (3) 同項が憲法14条1項(平等原則)に違反するか(自書できる選挙人との差別、郵便等投票の代理記載制度との不均衡) (4) 控訴人が希望する補助者の選任を受けて投票できる地位を有するか (5) 立法行為・立法不作為の国家賠償法上の違法性 【判旨】 控訴棄却(一部訴え却下に変更)。裁判所は、まず訴えの適法性について、国政選挙に係る確認請求部分は公法上の法律関係に関する確認の訴えとして確認の利益を肯定したが、地方選挙に係る部分は被控訴人(国)の事務ではないとして却下した。憲法適合性の本案判断では、憲法15条4項の投票の秘密の保障は客観的な制度保障にとどまらず、選挙人の主観的権利としても保障されると判示した上で、改正後公選法48条2項は当該主観的権利を制約するものであると認めた。しかし、投票事務従事者は公務員として政治的中立性が制度的に確保され、守秘義務が罰則付きで課されていること、投票内容を表示した場合の刑罰規定が設けられていること等の制度的手当により、秘密保障に対する制約は必要最小限度にとどめられていると評価し、選挙の公正確保の観点からやむを得ないものとして憲法15条4項に違反しないと結論づけた。憲法14条1項(平等原則)違反の主張についても、代理投票制度と郵便等投票の代理記載制度は、投票管理者の管理下で投票できるか否か等の違いに応じた合理的な区別であるとして退けた。国家賠償請求については、立法行為・立法不作為のいずれについても国賠法上の違法は認められないとした。