特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「留置針組立体」に関する特許権(特許第6566159号)を有する医療機器メーカーのニプロ株式会社(原告)が、株式会社トップ(被告)による留置針製品(ファインガードSVセット等)の製造販売が原告の特許権を侵害すると主張し、特許法100条1項・2項に基づく製造販売等の差止め及び廃棄、並びに民法709条及び特許法102条2項に基づく損害賠償288万3600円の支払を求めた事案である。本件特許は、点滴等に用いる翼付静脈留置針の誤刺防止機構に関するもので、使用後に針先を覆う針先プロテクタの拡開部において、針先再露出を防止する係止片を大径部側に一体形成し、小径部側には設けないという構成を特徴とする。原告はセーフティ型留置針市場で約80%のシェアを有していた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)、(2)本件特許に無効理由があるか(争点2)、(3)先使用権の成否(争点3)、(4)独占禁止法違反に基づく権利濫用の成否(争点4)、(5)損害額(争点5)であった。争点1の中心は、被告製品の針先保護部の小径部側に設けられた「小径部側壁部」が、本件発明で小径部側に設けられてはならないとされる「係止片」に該当するか否かであった。原告は、小径部側壁部は針基の回動を防止するだけで針先再露出を防止する係止片には当たらないと主張し、被告は、小径部側壁部が大径部係止手段と協働して針先再露出を防止しているから係止片に該当すると主張した。 【判旨】 裁判所は、争点1-1(構成要件1E(4)、2E(4)、3E(5)の充足性)について判断し、請求を棄却した。裁判所は、本件発明の「係止片」について、針先の先端側への移動を阻止する具体的態様は限定されておらず、他の部材と協働して針先の移動を阻止する構成を含むと解した。その上で、被告製品では、小径部側壁部による針基の回動防止と大径部係止手段による針基の受け部の係止が協働して針先の再露出を防止していると認定し、小径部側壁部は本件発明で小径部側に設けることが排除されている「係止片」に該当すると判断した。また、原告が主張した「係止片」の形状限定(「針ハブに向かって傾斜した内側面を有する」ものに限られるとの主張)についても、当該文言は大径部側の係止片の構成を特定したものにすぎず、小径部側に設けられてはならない係止片の形状を限定するものではないと退けた。以上から、被告製品は構成要件を充足せず本件発明の技術的範囲に属しないとして、その余の争点を判断するまでもなく原告の請求を全て棄却した。