特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「印刷された再帰反射シート」に関する特許権(特許第4466883号)を有する原告(日本カーバイド工業)が、被告ら(スリーエムジャパンイノベーション及びスリーエムジャパンプロダクツ)による反射シートの製造販売等が上記特許権を侵害するとして、主位的に民法709条及び特許法102条2項に基づき約106億円の損害賠償等を、予備的に同条3項に基づき約34億円の損害賠償等を、さらに予備的に不当利得返還請求として約15億円の支払を求めた事案である。本件特許は、道路標識やナンバープレート等に用いられる再帰反射シートにおいて、色相改善のための印刷層を独立した領域として繰り返しパターンで設置し、その面積を0.15〜30平方ミリメートルとし、白色の無機顔料等の着色剤を含有させることで、耐候性・耐水性を維持しつつ色相を改善するという技術に特徴がある。なお、同特許に対応する欧州特許についてはドイツでの侵害訴訟・無効訴訟を経て有効性と侵害が確定済みであった。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件充足性)、(2)本件特許に無効理由(サポート要件違反、実施可能要件違反、明確性要件違反、新規性・進歩性欠如)があるか、(3)損害額(特許法102条2項・3項)、(4)消滅時効の成否であった。特に技術的範囲の充足性については、被告製品の単一層樹脂シートが「保持体層」を備えるか、印刷領域の面積要件を満たすか、着色剤が「色相を明るくすること」を要するかが詳細に争われた。 【判旨】 裁判所は、まず構成要件充足性について、被告旧製品(印刷領域面積が0.15〜30平方ミリメートルの範囲内の製品)は本件発明の技術的範囲に属すると認定した。被告製品のキューブコーナーは単一層の樹脂シートであるが、明細書の記載に照らし、反射素子と保持体層が一体の構成も「反射素子層」に含まれると解し、構成要件を充足すると判断した。一方、被告新製品(印刷領域面積が上記範囲外の製品)については技術的範囲に属しないとした。無効理由については、サポート要件違反、実施可能要件違反、明確性要件違反、各先行文献に基づく新規性欠如・進歩性欠如のいずれも認めず、本件特許は有効であると判断した。損害額については、特許法102条2項に基づき、被告旧製品の売上高から製造販売に直接関連する経費を控除した限界利益を算定した上で、原告製品と被告旧製品の販売単価の差異を考慮して2割の推定覆滅を認め、2項による損害額を約14億1222万円、弁護士費用相当額を約1億4122万円とし、合計約15億5344万円の損害を認容した。消滅時効の抗弁は認められなかった。