AI概要
【事案の概要】 金型製作会社の代表者である原告が、歯科医師であり歯科衛生商品の製造販売会社(被告歯愛社・被告デンタル社)の代表取締役でもある被告Gに対し、入れ歯入れ容器の意匠に関して損害賠償等を求めた事案である。原告は、被告Gが原告の創作した入れ歯入れ容器の意匠について冒認出願をして意匠権の設定登録を受け、被告らがその実施品を販売したと主張し、主位的に共同不法行為に基づく損害賠償(意匠登録を受ける権利の対価相当額2億2800万円、弁護士費用200万円、創作者名誉権侵害の慰謝料300万円)を、予備的に不当利得返還請求(被告Gにつき9302万円、被告歯愛社につき9029万円、被告デンタル社につき4469万円)を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件意匠の創作者が原告であるか否か(意匠登録を受ける権利の帰属)、(2)創作者名誉権侵害の成否、(3)損害の発生及び損害額、(4)消滅時効の成否、(5)不当利得返還請求権の成否、(6)権利濫用の成否である。原告は、自らCADを用いて容器の図面を作成し、丸みを帯びた形状や二重ヒンジ構造等を創作したと主張した。被告らは、被告Gが歯科医師としての経験を活かして既存製品を参考にデッサンを作成し寸法を指示したのであり、原告はヒンジの二重構造を提案したにとどまると反論した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。裁判所は、意匠の創作をした者とは、形状の創造・作出の過程にその意思を直接的に反映し、実質上その形状の形成に参画した者をいい、主体的意思を欠く補助者はこれに含まれないと解した上で、認定事実に基づき以下のとおり判断した。被告Gは、歯科医師としての経験から使いやすく安価な入れ歯入れ容器を着想し、既存製品を参考にしつつ、詳細な寸法を書き込んだデッサンを自ら作成して原告に金型製作を指示したのであり、本件意匠の創造・作出には被告Gの意思が直接的に反映されている。一方、原告は被告Gから形状・寸法の指示を受けた上で図面や金型を作成したにすぎず、補助者としての立場で関与したものである。原告がヒンジ部分の二重構造を提案・設計した点についても、当該形状は専ら機能的側面から設計されたものであり意匠としては保護されない上、製品全体のごく一部を占めるにすぎず、本件意匠の形状の創造・作出に原告の意思が直接的に反映されたとは認められない。したがって、原告は本件意匠の創作者とは認められず、意匠登録を受ける権利も原告に帰属しない。よって、不法行為に基づく損害賠償請求、創作者名誉権侵害に基づく損害賠償請求及び不当利得返還請求は、いずれも理由がないとして棄却した。