AI概要
【事案の概要】 水道配管の漏水探査等を業とする原告(水研テック株式会社)が、元従業員である被告に対し、被告が漏水探査に使用する器具は原告の保有する特許(「水道配管における漏水位置検知装置」、特許第6331164号)の技術的範囲に属するとして、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償1080万円等を請求した事案(本訴)。被告は原告を退職後、「アクア漏水探査」の屋号で漏水探査事業を営んでいた。これに対し被告は、本訴は事実的・法律的根拠を欠くにもかかわらず提起されたものであり、不法行為を構成するとして、慰謝料300万円及び弁護士費用199万1000円の合計499万1000円等の損害賠償を反訴として請求した。 【争点】 ①被告装置が本件各発明の技術的範囲に属するか(文言侵害・均等侵害の成否)、②本件特許に無効理由があるか、③原告の損害額、④本訴提起が不法行為を構成するか、⑤被告の損害額。 【判旨】 裁判所は、本訴請求を棄却し、反訴請求を50万円(慰謝料30万円、弁護士費用20万円)の限度で認容した。 文言侵害について、本件発明1は水素混合ガスと水素ガス探索機を用いた漏水位置検知装置に関するものであるところ、被告装置は水素混合ガスや水素ガス探索機を使用せず、探査ガス注入口・水素ガスボンベ・混合ガス操作ボックスも備えていないから、構成要件A〜Eをいずれも充足しないとした。本件発明2についても、本件発明1の従属項であり構成要件Hを充足せず、また被告装置はニップル及びソケットを使用しておらず構成要件Gも充足しないとした。 均等侵害について、本件各発明の本質的部分は、エアコンプレッサーと水素ガスボンベの両者を耐圧ホースで接続する混合ガス操作ボックスを備え、空気と水素混合ガスによる探査を一つの装置で可能とする点にあるところ、被告装置はこの本質的部分において本件各発明と相違するから、少なくとも均等の第1要件を欠き、均等侵害も成立しないとした。 反訴について、裁判所は、原告が被告退職後から長年にわたり被告の事業活動を問題視し、刑事告訴の可能性に言及しつつ非難する書面を送付してきた経緯、被告から特許侵害に当たらないと反論されたにもかかわらず侵害と考える理由に言及したことがなく、被告の使用する装置の調査も積極的に行わなかった経緯等を認定し、原告は本訴の権利又は法律関係が事実的・法律的根拠を欠くことを通常人であれば容易に知り得たのに、被告の営業を妨害する目的で敢えて本訴を提起したものであり、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとして、不法行為の成立を認めた。損害額は、弁護士費用20万円及び慰謝料30万円の合計50万円と認定した。