損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被控訴人(被告)が運転する普通乗用自動車が横断歩道を歩行中の控訴人A(原告、事故当時17歳、全盲の視覚障害者)に衝突した交通事故について、控訴人Aが民法709条及び自賠法3条に基づき損害賠償を求め、同控訴人の父母である控訴人B及び同Cも民法709条・710条に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審である。控訴人Aは本件事故により一時意識不明の重体となり、高次脳機能障害(認知困難、記憶困難、注意困難、課題遂行困難)、てんかん、歩行困難、左上肢巧緻運動困難等の重篤な後遺障害(後遺障害等級3級3号)が残存した。原審は控訴人Aにつき約1億3929万円、父母につき各220万円を認容したが、控訴人らがこれを不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)控訴人Aの損害額(特に全盲の視覚障害者である控訴人Aの逸失利益算定における基礎収入の額、将来介護費の算定、将来治療費等の範囲)、(2)控訴人B及び同Cの損害額である。控訴人らは、障害者権利条約や障害者雇用促進法の理念に基づき、障害の有無にかかわらず賃金センサス男女計・全年齢・学歴計の平均賃金を基礎収入とすべきと主張した。また、将来介護費について、てんかん重積発作に備え常時2名の付添人が必要であり、近親者介護から職業付添人3交代制への切替えが必要と主張した。 【判旨】 裁判所は、控訴人Aの請求を約2億0344万円の限度で認容し、原判決を変更した(控訴人B・Cの控訴は棄却)。逸失利益の基礎収入について、全盲の視覚障害が労働能力の発揮を相当程度阻害することは否定し難いとしつつも、障害者雇用の促進や就労支援機器の開発・普及等の社会環境の変化、控訴人A自身がパソコンに習熟し大学進学や一般企業就職を目指していた個別事情を踏まえ、健常者と同様の賃金条件で就労する可能性が相当にあったと認め、賃金センサス平均賃金の8割(年額約391万円)を基礎収入とした(原審の約342万円から増額)。将来介護費については、てんかん重積発作の危険に備え常時介護が必要と認めつつ、近親者2名体制の日額を1万2000円、職業付添人による介護を日額3万円(いずれも1名の一般的費用の1.5倍)と評価し、近親者から職業付添人への切替時期を控訴人Cが67歳に達する令和16年と認定した。後遺障害慰謝料は、被控訴人の過失の程度が大きいこと等を考慮し原審の2800万円から3000万円に増額した。他方、鍼灸整骨院の施術費用や心理外来カウンセリング費用、家屋改造費は相当因果関係を否定した。