損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造」に関する特許権を有する一審原告(豊田自動織機)が、一審被告(ハノンシステムズ・ジャパン)の輸入・販売する圧縮機(被告各製品)が同特許権の技術的範囲に属すると主張し、損害賠償等を求めた事案の控訴審である。原審は特許権侵害を認め約4億3830万円を認容したが、双方が控訴した。一審原告は当審で請求を約18億5362万円に拡張した。本件特許はロータリバルブ方式のピストン式圧縮機に関するもので、従来のリードバルブ方式の欠点を克服し、圧縮反力を利用して冷媒漏れを防止し体積効率を向上させる基本発明である。 【争点】 主な争点は、(1)無効理由(実施可能要件違反・サポート要件違反)の成否、(2)損害額の算定(特許法102条2項・3項)、(3)実施料率、(4)推定覆滅事由の有無、(5)消滅時効の成否である。一審被告は、本件発明が体積効率向上の効果を奏しないとする比較実験結果(乙67)を提出し、実施可能要件・サポート要件違反を主張した。損害額については、一審原告が実施料率8%以上を主張したのに対し、一審被告は推定覆滅割合8〜9割以上を主張して争った。 【判旨】 知財高裁は、一審原告の請求を約6億9886万円の限度で認容し、原判決を変更した。まず無効理由について、本件明細書には課題解決手段や具体的構成が記載されており、クリアランス管理の示唆もあることから実施可能要件違反は認められないとした。一審被告提出の比較実験(乙67)は実験条件が不明で信用性を検証できないとして排斥した。サポート要件違反も同様に否定した。損害額について、裁判所は特許法102条3項に基づき実施料率3%が相当と判断した。その根拠として、圧縮機分野の実施料率が3〜4%を中心とすること、本件発明がロータリバルブ方式の実用化に寄与した相応の技術的価値を有すること、侵害時の大部分で代替技術がなかったこと、両者が競業関係にあり相互に実施許諾を行うことが考えにくいこと等を挙げた。他方、顧客吸引力が一定程度限定されること、売上高にクラッチ部分が含まれること等も考慮した。102条2項による損害額(限界利益額)は3項による損害額を下回るため、覆滅事由の判断を要しないとした。消費税相当額8%の加算も認め、弁護士・弁理士費用を加えた合計約6億9886万円を損害として認容した。