過失運転致傷被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成30年7月10日午後1時30分頃、普通乗用自動車(軽自動車)を運転し、広島市内のガソリンスタンド敷地内から北側に接する歩道を横断して車道に進出しようとした際、歩道手前で一時停止せず、安全確認が不十分なまま時速約4.2kmで進行した。その結果、歩道上を左方から右方へ時速約39.6kmで進行してきた自転車(被害者・当時41歳)に自車右前部を衝突させ、被害者を路上に転倒させ、入院加療150日間を要する脊髄損傷等の傷害を負わせた。ガソリンスタンド敷地西端には高さ2.5mの壁や看板等があり、敷地内から歩道に進出する際の左方の見通しは不良であった。原審(広島地裁)は、歩道手前での一時停止義務違反を過失と認定して有罪としたが、被告人側が事実誤認等を理由に控訴した。 【争点】 本件の主な争点は、①被告人に課すべき注意義務の内容、②歩道手前の地点での一時停止義務の有効性、③結果回避可能性の3点である。原審は、歩道手前で一時停止し安全確認すべき義務を認定したが、弁護人は、歩道手前で一時停止しても左方の見通しが不良で自転車を視認できないから、一時停止義務を課すのは不当であると主張した。控訴審は、歩道手前の地点では壁等の遮蔽物により左方の歩道上の状況を視認することが困難であり、同地点で一時停止・安全確認しても左方からの自転車を発見して衝突回避措置を執ることはできなかったと認定し、原審の注意義務の設定は不合理であると判断した。さらに、一時停止により衝突地点への到達が遅れて偶然に結果を回避できた可能性を根拠に因果関係を肯定した原審の論理も、一時停止義務の本来の趣旨(安全確認のため)とは異なる目的で義務を課すものであり、許されないとした。 【判旨(量刑)】 広島高裁は、原判決には事実誤認があるとして破棄した上で、当審で追加された予備的訴因に基づき自判した。予備的訴因は、歩道手前で一時停止した上、小刻みに停止・発進を繰り返すなどして左方の見通しが開ける地点(Ⓟ地点)まで進行し、同地点で安全確認すべき注意義務を設定するものである。高裁は、Ⓟ地点からは左方約54.9m先まで視認可能であり、同地点で一旦停止して左方の安全を確認していれば自転車との衝突は回避できたと認定した。弁護人は被害自転車の高速度(時速約39.6km)を理由に結果回避可能性を争ったが、高裁はⓅ地点で停止した状態から自転車を発見し発進しないことで衝突回避は十分可能であったとして排斥した。量刑については、路外施設から歩道を横断する場面での大きな過失と脊髄損傷等の重篤な傷害結果を考慮しつつ、被害者が歩道上で徐行義務に違反し時速約39.6kmで走行していたことが事故の一因となった側面も認め、前科前歴がないことも併せ、原審求刑(罰金50万円)より減額し、被告人を罰金40万円に処した。