AI概要
【事案の概要】 特定適格消費者団体である原告が、順天堂大学を運営する学校法人である被告に対し、被告が平成29年度及び平成30年度の医学部一般入学試験において、受験者に事前に明らかにすることなく、女性及び浪人生を不利益に取り扱う判定基準(本件判定基準)を用いたことが不法行為又は債務不履行に該当するとして、消費者裁判手続特例法に基づく共通義務確認の訴えを提起した事案である。具体的には、一般A方式の一次試験では成績順位101位以下(平成30年度は201位以下)の受験者について浪人年数・性別に応じた不合格基準が設けられ、二次試験では全方式で女性受験者の合格点が男性受験者より0.5点高く設定されていた。原告は、入学検定料・送金手数料・郵送料(本件受験費用)、旅費宿泊費及び特定適格消費者団体への報酬費用相当額の損害賠償を求めた。 【争点】 1. 共通性の要件(特例法2条4号)を充足するか 2. 支配性の要件(特例法3条4項)を充足するか 3. 被告に本件判定基準を事前に明らかにすべき義務があるか 4. 事前開示義務違反により生じた損害の有無 5. 被告に入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務があるか 6. 同義務違反により生じた損害の有無 【判旨】 裁判所は、主位的請求(事前開示義務違反に基づく不法行為)について、旅費宿泊費を除き原告の請求を認容した。まず共通性の要件について、請求を基礎付ける事実関係及び法的根拠が対象消費者全員に共通であるとして充足を認めた。支配性の要件については、本件受験費用等は定型的で書証による審理が容易であるとして充足を認めたが、旅費宿泊費は個々の消費者の事情による個別性が高く支配性を欠くとして却下した。事前開示義務の有無について、裁判所は、私立大学も公の性質を有し憲法の諸規定の趣旨を尊重する義務を負うこと、大学設置基準及び大学入学者選抜実施要項が公正かつ妥当な方法による選抜を求め、性別・年齢等の属性による不利益取扱いを想定していなかったこと、第三者委員会が本件判定基準に合理的理由を認めなかったこと等を総合考慮し、被告は本件判定基準を事前に明らかにすべき信義則上の義務を負っていたと判示した。被告が主張した性別による差異の合理性(女子寮の収容能力、精神的成熟速度の性差)及び浪人年数による差異の合理性(医師国家試験合格率との相関)についても、いずれも合理的理由があるとは認められないとした。損害については、本件判定基準が事前に明らかにされていれば一般的に出願しなかったといえる関係があるとして、本件受験費用及び特定適格消費者団体への報酬費用相当額を損害と認めた。