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【事案の概要】 本件は、原告(マルホ株式会社)が、被告(健栄製薬株式会社)の商標「ヒルドマイルド」(標準文字、第5類「薬剤」、登録第6178213号)について、商標法46条1項1号に基づく商標登録無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。原告は、昭和29年から血行促進・皮膚保湿剤「ヒルドイド」を販売しており、引用商標として「Hirudoid」(引用商標1)及び「ヒルドイド」(引用商標2)の商標権を有している。原告は、本件商標が商標法4条1項11号(先願の登録商標との類似)又は同15号(混同を生ずるおそれ)に該当すると主張した。審決は、本件商標と引用商標は外観及び称呼において明確に区別できる非類似の商標であり、原告使用商標の周知著名性も認められないとして、いずれの該当性も否定していた。 【争点】 1. 商標法4条1項11号該当性(本件商標「ヒルドマイルド」と引用商標「ヒルドイド」等の類否) 2. 商標法4条1項15号該当性(本件商標の使用による出所混同のおそれ) 【判旨】 知財高裁は、審決を取り消した。まず、本件商標「ヒルドマイルド」は結合商標であり、「マイルド」部分は薬剤の分野において薬効や刺激が弱いことを表す語として広く使用されており、自他識別機能は極めて弱いと認定した。他方、「ヒルド」部分は辞書に採録されていない造語であり、長期間にわたり原告商品以外の薬剤名称にはほぼ使用されておらず、需要者に対し出所識別標識として強い印象を与えるとして、「ヒルド」部分のみを抽出して引用商標と比較することが許されると判断した。その上で、本件商標と引用商標2「ヒルドイド」を比較し、7文字中「ヒルド」「イ」「ド」の5文字が共通し並び順も同じであること、称呼においても語頭3音と語尾1音が共通すること、さらに取引の実情として、原告商品が60年以上にわたり販売され医療用医薬品の年間売上19位に達する高い売上げを有すること、ヘパリン類似物質含有製剤市場で金額シェア7割超を維持していたこと、女性誌等でも広く取り上げられていたこと、「ヒルド」を語頭に付す薬剤が原告商品以外にほぼ存在しなかったことなどから、需要者の間で「ヒルド」は「ヒルドイド」を意味する語として認識されていたと認定した。以上を総合し、本件商標と引用商標2は指定商品が同一で、外観・観念・称呼に共通部分があり、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとして類似を認め、商標法4条1項11号に該当すると判断した。