AI概要
【事案の概要】 名古屋拘置所に収容されている死刑確定者である原告が、同拘置所長による以下の各処分等が違法であるとして、国に対し国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案である。(1)原告の信書(手紙)の発受を許可しなかったこと、(2)原告への差入物品について差入人に引取りを求めたこと、(3)書籍等の一部を抹消した上で閲覧させ、又は抹消に同意しない場合に領置したこと、(4)原告が提起していた別件国家賠償請求訴訟において、原告の医療記録・面会記録・動静経過表等を第三者に提供し又は証拠として提出したこと。原告は慰謝料等合計約414万円を請求した。 【争点】 (1)信書の発受不許可処分の違法性、(2)差入不許可処分の違法性、(3)書籍等の閲覧禁止処分の違法性、(4)別件訴訟における証拠提出行為等の違法性、(5)損害額、(6)消滅時効の成否。特に、死刑確定者の外部交通(信書の発受)について、刑事収容施設法139条1項各号(親族との信書、重大用務処理のための信書、心情の安定に資する信書)及び同条2項(交友関係維持等のための裁量的許可)の該当性が主要な争点となった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を一部認容した(認容額合計20万5000円、請求額の約5%)。まず消滅時効について、信書の発受不許可処分は告知日から3年の時効が進行するとして、多数の処分につき時効消滅を認めた。一方、差入不許可処分は原告に告知されていなかったため時効は進行しないとした。信書の発受不許可処分については、キリスト教の信仰を通じて7年以上の交友関係を形成していた支援者からの祈りや誕生日祝いの信書、洗礼を授けた司教からの信書、養子縁組による親族からの信書等の不許可を違法と判断した。他方、交流が長年途絶えていた者や交友関係が形成されていない者からの信書の不許可は適法とした。差入不許可処分については、キリスト教関連書籍等の差入れにつき、外部交通許可方針者でないことのみを理由に個別検討なく不許可としたことは裁量権の逸脱・濫用であるとして違法と判断した。閲覧禁止処分については、死刑執行場面の描写や刑場写真等の抹消につき、過去の自殺未遂等から15年以上経過しその間に不安定な精神状態を窺わせる証拠がないことから、閲覧禁止の合理的根拠を欠くとして違法と判断した。別件訴訟における証拠提出行為等については、訴訟における主張立証活動として必要不可欠であり、不法行為を構成しないとした。