AI概要
【事案の概要】 被告人は、弁護士会所属の弁護士であり、家庭裁判所から成年後見人に選任されて被後見人の財産管理等の業務に従事していた。被告人は、被後見人名義の銀行預金口座の預金を業務上預かり保管中、平成30年11月30日から令和元年11月27日までの約1年間に12回にわたり、自己の用途に費消する目的で同口座から現金合計2100万円を出金して着服横領した。動機は、弁護士業による収入が減少したにもかかわらず適切な対応をとらず、事務所経費や生活費の支払い、預り金の補填などのために着服を重ねたというものであった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人が弁護士として高い職業倫理を備え誠実に職務を行うことを信頼されて成年後見人に選任されたにもかかわらず、その立場を悪用して約1年間に12回にわたり着服を重ね、被害額が合計2100万円と高額に及んでいることを指摘した。委託信任関係を踏みにじり、弁護士という職業や成年後見制度に対する信頼をも揺るがしかねない悪質な犯行であるとした。弁護士業の収入減に適切な対応をとらなかった経緯にも酌むべき点はなく、臨床心理士が指摘する被告人の自閉的な性格傾向等を考慮しても評価は変わらないとした。 他方、被告人が発覚後に周囲の助力を得て速やかに2100万円全額を弁償したことを踏まえても、犯情はかなり重いとした。その上で、被告人が事実を素直に認めていること、被害弁償に加えて成年後見人報酬全額約265万円を返金したこと、弁護士を辞めて臨床心理士のカウンセリングを受け自身の問題点の理解と改善に努めていること、前科がないこと、弁護士として社会に貢献した面があったこと、自宅を売却して債務弁済に充て法律事務所事務員として再出発していること、母と勤務先弁護士が監督を約していることなどの事情を考慮した。これらを総合し、刑の執行猶予が相当とまではいえないものの、刑期は主文の程度にとどめるのが相当であるとして、求刑懲役4年に対し、懲役2年2月の実刑を言い渡した。