特許権侵害差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(シャープ株式会社)は、発明の名称を「受信装置および受信方法」とする特許第5379269号の特許権者であり、被告(オウガ・ジャパン株式会社)に対し、被告が販売する携帯電話(IEEE802.11ac規格準拠のWi-Fi機能を備えたスマートフォン)が本件特許の技術的範囲に属するとして、特許法100条1項に基づく差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄を求めた事案である。本件特許は、OFDM信号の送信において、第1の期間では各周波数チャネル中心のサブキャリアを使用せず、第2の期間では周波数帯域全体の中心のサブキャリアのみを使用しないという信号処理に関する発明である。 【争点】 (1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件充足性) (2) 乙1文献(IEEE802.11規格策定時の寄書)を引用例とする新規性欠如の無効の抗弁の成否 (3) 訂正の再抗弁の成否(訂正発明の進歩性欠如等) (4) FRAND宣言に基づく権利濫用の成否 【判旨】 請求棄却。裁判所は、事案に鑑みまず争点(2)の新規性欠如について判断した。乙1文献は、IEEE802.11規格の策定作業に際して作成された寄書であり、本件優先日前にIEEEのFTPサーバにアップロードされ公衆に利用可能となったものと認定した。裁判所は、乙1文献に記載された乙1発明(40MHz帯域幅における2個の20MHzサブチャネルを使用する送信機の構成)と本件発明の各構成要件を対比し、全て一致すると認定した。原告は、本件発明の「M個(Mは2以上の偶数)」と乙1発明の「2個」は相違点であると主張したが、裁判所は、既に公開されている技術には特許権を付与しないとした特許法29条1項の趣旨に照らし、新規性判断の視点からは「2以上の偶数」と「2」とを同一と認定するのが相当であるとしてこれを退け、本件発明は新規性を欠くと判断した。 訂正の再抗弁については、本件訂正により「Mは第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チャネル数より少ない」との構成が付加された点を本件相違点と認定したが、乙1文献自体に使用可能なサブチャネルを増やす示唆があること、OFDM信号の送信に2個を上回る周波数チャネルを用いることは本件優先日において周知であったこと等から、本件相違点に係る構成は当業者が適宜決定すべき設計事項であるとして、本件訂正発明は進歩性を欠くと判断し、訂正の再抗弁も理由がないとした。