AI概要
【事案の概要】 本件は、被告Aが代表社員を務める合同会社被告示現舎らが、昭和11年に作成された「全國部落調査」を復刻した書籍を出版しようとし、また全国の同和地区の所在地を一覧化した「本件地域一覧」や、部落解放同盟関係者の氏名・住所・電話番号等を記載した「本件人物一覧」をインターネット上のウェブサイト「同和地区Wiki」等で公開したことに対し、同和地区出身者である個人原告ら及び部落解放同盟(原告解放同盟)が、プライバシー権、名誉権及び差別されない権利等の人格権侵害を主張して、書籍の出版差止め、ウェブサイト記事の削除・公開差止め並びに損害賠償を求めた事案である(本訴)。被告らは反訴として、仮処分申立て及び本訴提起が不法行為に当たるとして損害賠償等を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件地域一覧の公開による個人原告らのプライバシー侵害の有無、(2)本件人物一覧の公開によるプライバシー侵害の有無、(3)差別されない権利の侵害の有無、(4)出版差止め及びウェブサイト記事の削除・公開差止めの可否、(5)損害賠償義務の有無及び損害額、(6)反訴に係る仮処分申立て・本訴提起の違法性の有無である。 【判旨】 裁判所は、個人の「住所又は本籍が同和地区内にあること」はみだりに他人に知られたくないプライバシーに属する情報に当たると判示した。本件地域一覧それ自体は地域に関する情報にすぎないが、個人の住所等と対照することで被差別部落出身者か否かの調査を容易にするものであり、これを公表する行為と同視できるとして、現在の住所又は本籍が同和地区内にある個人原告らとの関係でプライバシーの違法な侵害を認めた。被告Aの挑発的な投稿内容等も踏まえ、学術的価値の主張を考慮しても公益目的でないことは明白とした。差別されない権利については、その内実が不明確であるとして侵害を認めなかった。出版差止めについては、差別的取扱いや誹謗中傷を受けるという重大な損失の回復が事後に不可能又は著しく困難であるとして、人格権に基づく差止めを認容した。損害賠償については、被告Aの不法行為責任を認め、個人原告らに対する慰謝料の支払を命じた。一方、被告示現舎及び被告Bについては本件地域一覧等の公開への関与が認められず、損害賠償責任を否定した。本件人物一覧についても、住所・電話番号・勤務先等はプライバシーに属する情報に当たるとして、一部の個人原告らに対する違法なプライバシー侵害を認めた。反訴請求については、仮処分申立て及び本訴提起の違法性をいずれも否定し、全て棄却した。