損害賠償,損害賠償各請求控訴事件,同附帯控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波により、東京電力(第1審被告東電)が設置・運営する福島第一原子力発電所1号機から4号機において、全交流電源が喪失し、放射性物質が大気中に放出される重大事故(福島第一原発事故)が発生した。本件は、事故当時福島県内に居住していた第1審原告ら(23名)が、本件事故により愛媛県への避難を余儀なくされたと主張し、第1審被告東電に対しては原子力損害賠償法3条1項に基づき、第1審被告国に対しては経済産業大臣が電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発する規制権限を行使すべきであったのにこれを怠った違法があるとして国家賠償法1条1項に基づき、各慰謝料等の損害賠償を求めた事案の控訴審である。原審(松山地方裁判所)は、東電の原賠法上の責任及び国の国賠法上の責任をいずれも認め、原告らの請求を一部認容した。これに対し、原告ら及び被告らの双方が控訴した。 【争点】 主要な争点は、(1)国(経済産業大臣)の規制権限不行使の違法性(長期評価の見解に基づく津波の予見可能性、結果回避可能性)、(2)東電の過失の有無及び程度、(3)避難の相当性と損害額である。特に、平成14年7月に地震調査研究推進本部が公表した長期評価の見解(三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域のどこでも津波地震が発生し得るとの見解)が、規制権限行使を義務付ける予見可能性の基礎となるか否かが中心的争点となった。 【判旨】 高松高等裁判所は、原判決を一部変更し、原告らの請求を一部認容した。 国の責任について、長期評価の見解は相応の科学的信頼性を有するものと評価でき、経済産業大臣は長期評価の公表後、遅くとも平成14年末までに、福島第一原発に想定津波が到来した場合に全交流電源喪失等の重大事故が発生するおそれを認識し得たと認定した。長期評価の見解に依拠して津波評価シミュレーションを実施すれば、敷地高O.P.+10mを大幅に上回るO.P.+15.7m程度の津波が到来するとの結果が得られたはずであり、防潮堤の設置に加え、タービン建屋等の水密化及び重要機器室の水密化の措置が講じられていれば、本件事故と同様の全交流電源喪失には至らなかったと判断した。経済産業大臣が技術基準適合命令を発しなかったことは、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き、国賠法1条1項の適用上違法であるとして、国の責任を認めた。 東電の責任については、原賠法3条に基づく無過失責任を認めた上、慰謝料算定の考慮要素として東電の過失も検討し、長期評価の見解公表後も津波対策を怠った東電の過失は相当程度に重いと認定した。国と東電は不真正連帯の関係に立つとし、それぞれ全額の賠償責任を負うと判示した。