発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 レコード製作会社である原告(ソニー・ミュージックレーベルズ)が、インターネット接続プロバイダ事業を営む被告(ソフトバンク)に対し、発信者情報の開示を求めた事案である。原告は、あるアーティストの楽曲を録音したレコードを製作し、令和2年8月に音楽CDとして全国発売していた。氏名不詳者が、令和2年12月頃、被告のインターネット接続サービスを利用し、ファイル交換ソフトウェア「BitTorrent」を用いて、原告が製作した上記レコードの複製ファイルを、不特定多数のBitTorrent利用者からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にした(送信可能化行為)。原告は、この行為によりレコード製作者としての送信可能化権(著作権法96条の2)が侵害されたことが明らかであるとして、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)4条1項に基づき、発信者の氏名・住所・電子メールアドレスの開示を求めた。 【争点】 本件では主に3つの争点が設定された。第1に、原告の送信可能化権が侵害されたことが明らかであるか。第2に、被告が開示関係役務提供者に該当するか。第3に、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか。特に争点3に関連して、被告は、損害賠償請求等には氏名及び住所があれば十分であり、電子メールアドレスの開示を受けるべき正当な理由はないと主張した。 【判旨】 裁判所は原告の請求を全部認容した。争点1・2について、証拠及び弁論の全趣旨から、本件発信者がBitTorrentを用いて本件レコードの複製ファイルを送信可能化したことを認定し、原告による許諾や著作隣接権の権利制限事由その他の違法性阻却事由は認められないとして、送信可能化権の侵害が明らかであると判断した。争点3について、原告が本件発信者に対し損害賠償請求及び差止請求を行う意思を有しており、そのために発信者情報の開示が必要であることを認めた。電子メールアドレスについても、省令(プロバイダ責任制限法4条1項の発信者情報を定める省令4号)が侵害情報の特定に資する情報の一つとして電子メールアドレスを挙げていること、被告が保有する氏名や住所が虚偽であったり転居していた場合には氏名・住所だけでは発信者を十分に特定できない場合がありうることを指摘し、電子メールアドレスの開示にも正当な理由があると判断した。