AI概要
【事案の概要】 本件は、「多色ペンライト」と称する発明に係る特許(特許第5608827号)の特許権者である原告(ターンオン有限会社)が、被告らの請求に基づき特許庁がした無効審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。原告の特許は、赤色・緑色・青色・黄色・白色の5色の発光ダイオード(LED)を備え、各LEDを単独で又は複数組み合わせて発光させることで多彩な発光色を得られるコンサート用ペンライトに関するものである。被告らは、ブログ記事(甲1)に記載されたRGB+白色の4色LEDペンライト(甲1発明)と、LED照明装置に関する公開特許公報(甲2)等に記載された技術事項に基づき、本件発明は進歩性を欠くとして無効審判を請求した。特許庁は、甲1発明に黄色LEDを追加することは当業者にとって格別困難ではないとして、本件特許の請求項1及び2に係る発明を無効とする審決をした。 【争点】 主たる争点は、本件発明と甲1発明との相違点1(黄色LEDの追加及びその発光色に関する構成)について、甲1発明に甲2等に記載された技術事項を採用することにより当業者が容易に想到できたか否かである。具体的には、(1)甲1発明における黄色の発色に関する課題認定の当否、(2)甲1発明の課題として認定された「演色性」と甲2に記載された「演色性」の意味の異同、(3)甲1発明(ペンライト)と甲2(LED照明装置)の技術分野の関連性と動機付けの有無が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、本件審決を取り消した。まず、甲1発明の課題認定について、甲1の写真に基づいて「イエロー」とされる黄色の発色自体に問題が内在しているとした審決の認定は、ディスプレイ表示やプリンタ印刷の性能・調整に依存する写真の発色をもって実際の製品の発色を判断したものであり、誤りであるとした。次に、審決が甲1発明の課題として認定した「演色性」(発色バランスの維持や多色選択肢の提供)は、甲2に記載された一般的意味の「演色性」(照明された物体の色が自然光で見た場合に近いか否か)とは異なるものであり、両者に共通の課題があるとはいえないと判断した。さらに、甲1発明(ペンライト)と甲2の技術事項(LED照明装置)は、いずれもLEDを光源とする点で共通するものの技術分野が完全には一致せず、相応の動機付けが必要であるところ、上記のとおり課題の共通性が認められない以上、甲1発明に甲2の技術事項を採用する動機付けはないとした。被告が主張したテレビジョン等の液晶ディスプレイにおける4原色技術の周知性についても、ペンライトとの加色構造や使用態様の相違から、甲1発明に適用する具体的示唆がないとして退けた。以上から、無効理由1ないし4の全てについて審決の判断に誤りがあるとして、審決を取り消した。