AI概要
【事案の概要】 本件は、医療用医薬品「ヒルドイド」(血行促進・皮膚保湿剤)の商標権者である原告(マルホ株式会社)が、被告(株式会社Stay Free)の登録商標「ヒルドプレミアム」(標準文字、第3類・化粧品)について、商標法4条1項11号(類似商標)及び同15号(混同を生ずるおそれ)に該当するとして商標登録無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。原告は「ヒルドイド」「Hirudoid」等の引用商標を保有しており、被告がヘパリン類似物質含有の医薬部外品に本件商標を使用して販売していた。平成26年頃から原告薬剤が美容雑誌等で保湿目的のスキンケア商品として紹介されるようになり、これを契機に「ヒルド」や「ヒル」を語頭に冠したヘパリン類似物質含有商品が複数の事業者から相次いで発売されるという市場環境の中で争われた事案である。 【争点】 (1) 商標法4条1項11号該当性:本件商標「ヒルドプレミアム」と引用商標「ヒルドイド」が類似するか。具体的には、本件商標から「ヒルド」の要部を抽出して引用商標と対比すべきか、外観・称呼・観念の各点で類似するか。 (2) 商標法4条1項15号該当性:本件商標を化粧品に使用した場合に、原告の業務に係る商品との混同を生ずるおそれがあるか。原告使用商標の周知著名性の程度、指定商品と原告薬剤との関連性、取引者・需要者の共通性等が問題となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。11号該当性について、裁判所は、本件商標が「ヒルド」と「プレミアム」の結合商標であり、「プレミアム」は化粧品分野で識別力が弱いことから「ヒルド」を要部として抽出することは認めつつも、引用商標「ヒルドイド」は造語であって「ヒルド」と「イド」に分離して観察すべき理由はないとした。称呼については、「ヒルド」(3音)と「ヒルドイド」(5音)は構成音及び音数が相違し、語尾の「イド」は濁音を含み強い印象を与えるため容易に聴別できるとした。外観についても、5文字中2文字の相違は大きいと判断した。15号該当性については、原告使用商標が医療関係者の間で周知であることは認めたものの、原告自身が一般消費者への広告を行っておらず、美容目的の使用を推奨しない企業姿勢を明確にしていることから、化粧品の需要者である一般消費者の間での周知著名性は認められないとした。また、医療用医薬品と化粧品との間には一般用医薬品という別カテゴリーが介在し、関連性は必ずしも強くないこと、需要者の共通性も低いことを指摘し、混同のおそれを否定した。被告によるフリーライドの動機が疑われるとしても、それ自体は15号該当性の判断を左右しないとした。