贈賄,政治資金規正法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、広島県福山市に本店を置く鶏卵の生産・販売会社(株式会社A)の代表取締役として業務全般を統括するとともに、養鶏生産物の需給安定等に関する事業を行う一般社団法人Cの特別顧問、養鶏産業の発展に関する事業を行う一般社団法人Dの代表理事として、これらの団体を実質的に運営していた。被告人は、国際獣疫事務局(OIE)が定める採卵鶏の飼養に関するアニマルウェルフェアの規約修正案が採択されれば、日本の養鶏業者が生産設備の大幅な変更を余儀なくされ経営に壊滅的な打撃を受けるとの懸念から、農林水産省に反対意見の取りまとめを働きかける必要があると考えていた。また、日本政策金融公庫による融資条件の緩和や融資額の拡大も求めていた。こうした背景の下、被告人は、当時の現職農林水産大臣Eに対し、両団体の事業にとって有利かつ便宜な取り計らいを受けたいなどの趣旨で、平成30年11月から令和元年8月にかけて3回にわたり合計500万円の現金を供与した(贈賄3件)。さらに、被告人は、Aが特定の国会議員に多額のパーティー券を購入したと公表されることを避けるため、Aの役員や従業員ら計27名の名義を使い、2回の政治資金パーティーの対価合計534万円を他人名義で支払い、一人当たりの支払額が20万円以下であるかのように偽装した(政治資金規正法違反2件)。 【判旨(量刑)】 裁判所は、贈賄について、農林水産行政の最高責任者である現職大臣に対し、被告人が自らの主体的判断で積極的に多額の現金を繰り返し供与したものであり、公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼を大きく害するものと指摘した。OIE規約修正案への対応は国際情勢等も踏まえた重要な政策判断事項であり、公庫の資金貸付条件も農林水産行政全体の利害調整を含む重要事項であるところ、被告人はこれらに現金供与により強い影響を及ぼそうとしたものであると認定した。実際に、養鶏業者と農水省担当者の打合せや国会議員を加えた陳情会議の開催といった前例のない便宜供与が行われ、農林水産行政や国政に対する国民の信頼を大きく害する結果をもたらしたと評価した。被告人が養鶏業界全体の利益を目的としていたとの主張については、特定の業界利益という狭い視野に基づくものであり、動機として酌むべき点はないとした。政治資金規正法違反についても、会社ぐるみで多くの者を違法行為に巻き込む常習的な犯行であり悪質であるとした。他方、被告人が別件の捜索を契機に本件各犯行を自主的に申告したこと、養鶏業界の一線を退く決意をして各要職を辞したことなどを被告人に有利な事情として考慮し、懲役1年8月・執行猶予4年とした(求刑:懲役1年8月)。