AI概要
【事案の概要】 本件は、名称を「燃料電池システム」とする発明について特許出願をした原告(インテリジェントエナジーリミテッド)が、拒絶査定不服審判の請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求めた訴訟である。本願発明は、直列に接続された複数の燃料電池スタックを備えるシステムにおいて、燃料電池スタックと並列に整流器を設け、制御装置が定期的にかつ電流需要とは独立して空気流動を調節することにより、燃料電池スタックの水和レベルを増加させる「再水和間隔」を提供するものである。燃料電池では膜の水分管理が重要であり、空気流動を一時的に抑えることでカソード側に水を生成・保持し、膜の水和を回復させることが技術的な核心である。審決は、引用発明(甲3:改良された燃料電池及びその制御方法)との間で進歩性を欠くとして請求を不成立としていた。 【争点】 主な争点は、本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定の誤りの有無、並びに進歩性(容易想到性)の判断の誤りの有無である。具体的には、(1)引用発明の「電界効果トランジスタ」が本願発明の「第1の整流器」に相当するか、(2)引用発明の「短絡制御回路」の目的である「負の水和降下現象の防止」が、本願発明の「水和レベルを増加させる再水和間隔の提供」と一致するか、(3)引用発明において燃料電池の故障検知時に行う燃料ガス供給停止を、定期的な空気流動の調節に置換することが当業者にとって容易であったかが争われた。 【判旨】 裁判所は、審決の判断には誤りがあるとして、これを取り消した。まず、引用発明の電界効果トランジスタは閉鎖電気状態において双方向に電流を流すものであり、一方向にのみ電流を流す整流器には相当しないとして、この点で審決の一致点認定に誤りがあると判断した。次に、本願発明の制御装置がMEA内の水分量を積極的に増加させる「再水和」を目的とするのに対し、引用発明の短絡制御回路は水和の損失を停止・抑制する「負の水和降下現象の防止」を目的とするにとどまり、両者の目的は異なるとして、この点でも審決の一致点認定に誤りがあるとした。さらに容易想到性について、引用発明は燃料電池の故障を示す状態を検知して燃料ガス供給を停止するものであり、これを定期的に行うことを想到することは当業者にとって容易とはいえず、また、主として熱の発生抑制を目的とする引用発明から、冷却効果も有する空気流動の停止を想到することも困難であるとして、審決の容易想到性の判断を否定した。