AI概要
【事案の概要】 自転車用チャイルドシートカバーの装着補助プレートに関する特許(特許第6457870号)を有する原告(自転車用品メーカー)が、被告(子供乗せ自転車用レインカバーの製造販売業者)に対し、被告がインターネット上で販売するレインカバー製品(イ号物件〜チ号物件)の装着補助具が本件特許発明の技術的範囲に属するとして、特許権に基づく差止め・廃棄請求及び損害賠償(合計約6700万円)を求めた事案である。本件特許発明は、チャイルドシートカバーをチャイルドシートに装着する際に使用する「装着補助プレート」であり、プレートの背面に設けた係着部材(面ファスナー)によってカバーを適宜の高さ位置に装着できることを特徴とする。被告は原告の指摘を受けてイ号・ロ号物件の販売を直ちに停止し、技術的範囲に属することを認めた上で、設計変更したハ号物件以降の製品に切り替えて販売を継続していた。 【争点】 主な争点は、(1)設計変更後の被告製品(ハ号物件等・ホ号物件等・ト号物件等)が本件特許発明の技術的範囲に属するか(特に構成要件Aの「装着補助プレート」に該当するか)、(2)原告の損害額(特許法102条2項に基づく推定と推定覆滅の程度)である。原告は、設計変更後の被告製品の装着補助具も全体として板状体であり「プレート」に該当すると主張した。これに対し被告は、面ファスナーや合成皮革の帯状体を組み合わせたに過ぎず、柔軟で容易に折り曲がるものは「プレート」に該当しないと反論した。 【判旨】 裁判所は、「プレート」の意義について、特許請求の範囲の記載及び明細書の記載を検討し、本件発明における「装着補助プレート」は、チャイルドシートの背面に接合する平面又は略平面状の薄い部材であり、外形形状・構造・材質に限定はないものの、少なくともそれ自体として一定の形状を保つことができ、力を加えれば変形するとしても力を除けば元に戻る「硬さ又は弾性」を備えていなければならないと解釈した。その上で、ハ号物件等・ホ号物件等・ト号物件等の装着補助具はいずれも面ファスナーや合成皮革の帯状体のみで構成され、特段の押圧をかけなくても自重で屈曲し、それ自体で形状を維持できる硬さ又は弾性を有しないから「プレート」に該当せず、構成要件Aを充足しないと判断し、技術的範囲への属否に関する被告の主張を認めた。他方、設計変更前のイ号・ロ号物件については特許権侵害を認め、損害額について検討した。被告の利益額313万6529円を基礎としつつ、本件発明の効果(各種シートへの対応性、カバー高さの調整機能)はいずれも本件発明によらなくても実現可能であり、装着補助プレートはカバー内部に隠れる補助的部品で顧客誘引力が極めて低いこと等を考慮し、8割の推定覆滅を認め、損害額を62万7305円と認定した。差止め・廃棄請求については、被告が既にイ号・ロ号物件の販売を停止しており侵害のおそれがないとして棄却した。