沖縄高江への愛知県警機動隊の派遣違法公金支出損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 愛知県の住民らが、愛知県警察本部長(A)が沖縄県公安委員会の警察法60条1項に基づく援助要求を受けて、沖縄県東村高江におけるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事の警備活動に愛知県警察の機動隊員を派遣する決定をし、派遣された警察官に対する給与・超過勤務手当等の支出決定及び支出命令をしたことについて、派遣決定が違法であり、それに続く支出も違法であるとして、地方自治法242条の2第1項4号ただし書に基づき、Aに対し約1億3363万円の賠償命令をすることを愛知県知事に求めた住民訴訟の控訴審である。原審は住民らの請求を全部棄却したため、住民らが控訴した。なお、北部訓練場のヘリパッド移設工事をめぐっては、住民らの反対運動が展開される中、平成28年7月以降、全国から約500人規模の機動隊員が派遣され、座り込みをする住民の強制排除、車両・テントの撤去、検問・ビデオ撮影などが行われていた。 【争点】 主な争点は、(1)派遣決定の違法が支出の違法事由となり得るか、(2)派遣決定の実体的違法の有無(警備活動の必要性・相当性、抗議活動の正当性)、(3)派遣決定の手続的違法の有無(公安委員会の承認なく警察本部長の専決で行われたことの適法性)、(4)Aの故意又は重大な過失の有無、(5)損害の範囲である。 【判旨】 名古屋高裁は、原判決を一部変更し、110万3107円の賠償命令の限度で住民らの請求を認容した。 まず実体的違法について、派遣された機動隊員による車両検問・ビデオ撮影・車両及びテント撤去等の職務行為には「適法な範囲を超えた部分があったことを否定できない」と認定しつつも、沖縄県公安委員会がそのような違法行為を組織的に行うことを目的として援助要求をしたとまでは認められず、また沖縄県警察の管理能力が客観的に欠けていたとはいえないとして、実体的違法は否定した。 他方、手続的違法については、ヘリパッド移設工事が政治的・社会的に大きな対立を生んでおり、社会的反響が大きく後日紛議が予想される事案であったから、愛知県警察の内部規程2条ただし書にいう「異例又は重要と認められるもの」に該当し、公安委員会の事前承認が必要であったと判断した。にもかかわらず、本件各派遣決定は公安委員会の承認を得ず警察本部長の専決で行われ、事後的な報告も単なる案件外報告にすぎず実質的審議を経ていなかったとして、手続的に違法であると認定した。さらに、Aは本件が「異例又は重要」に該当することを容易に認識できたのに看過して専決を行ったとして、重大な過失を認めた。損害については、派遣がなくても給与は支給されていたとして給与相当額の損害を否定し、特殊勤務手当も具体的金額を認定できないとして排斥したが、時間外勤務手当110万3107円については派遣がなければ発生しなかった費用として損害と認めた。