AI概要
【事案の概要】 原告は、遊漁船・遊覧船の運航業務等を業とする株式会社であり、北海道小樽市の臨港地区内の漁港区において観光船事業を計画していた。被告(小樽市)は、原告が設置しようとする船舶の係留施設や建物が、港湾法及び分区条例上、漁港区内で許容される構築物に該当すると判断し、平成28年6月以降、運河護岸登録、工作物等施工許可、港湾施設占用許可、建築確認済証の交付など一連の許可等(本件各原処分)を行った。原告はこれらの許可に基づき、係留施設の設置や建物4棟の建設を行い、同年8月に観光船事業を開始した。 しかし、小樽市議会で許可の適法性が問題となり、市長に対する問責決議案が可決されるなど紛糾した。この経緯は新聞やテレビで報道され、原告の観光船事業では利用客のキャンセルが相次いだ。被告は平成30年4月27日、原告の係留施設や建物は漁港区内で許容される構築物に該当しないとして、本件各原処分を取り消し、建物の用途変更又は撤去を命じる是正命令を行った(本件各取消処分)。原告は令和元年11月に観光船事業を廃業し、施設を撤去した。 原告は、そもそも本件各原処分は許可等がされるべきでない違法なものであり、これにより損害を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき約1億4320万円の損害賠償を求めた。被告は本件各原処分の国家賠償法上の違法性を争わず、損害の有無及び額のみを争った。 【争点】 本件各原処分による原告の損害の有無及び額が争点となった。具体的には、土地整備費、建物建築費、設備費、船舶関連費、車両費、宣伝広告費、撤去費、無形損害など15項目の各支出について、本件各原処分との相当因果関係の有無が個別に争われた。被告は、原処分前の支出には因果関係がないこと、営業上の経費は事業収益で回収されていること、資産として現存するものは損害に当たらないこと等を主張した。 【判旨】 裁判所は、本件各原処分の国家賠償法上の違法性は被告が争っていないため、被告は賠償責任を負うとした上で、損害の範囲について以下の基準を示した。第一に、本件各原処分がされた最初の日である平成28年6月1日以降に契約等が締結された支出は本件各原処分と相当因果関係のある損害とし、それ以前の支出は因果関係を欠くとした。第二に、通常の営業上の経費であっても、原告がいずれの年度も大幅な経常損失であったことなどから、直ちに損害から除外するのは相当でないとした。 この基準に基づき、各損害項目を個別に検討し、原処分前の契約に基づく支出(旅費交通費等)や因果関係の不明確な支出を除外する一方、建物建築費や設備費の大部分、船舶関連費の一部、宣伝広告費、撤去費等を損害と認めた。車両費については現存価値を控除し減価償却分のみを認容した。無形損害については、市議会での紛糾や報道による社会的評価の低下を認め50万円を認容した。弁護士費用500万円を含め、合計5578万8060円及び遅延損害金の支払を命じた(請求額約1億4320万円に対し約39%の認容率)。