遺族補償一時金不支給処分取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29行ウ72
- 事件名
- 遺族補償一時金不支給処分取消請求事件
- 裁判所
- 名古屋地方裁判所
- 裁判年月日
- 2021年10月11日
- 裁判官
- 井上泰人、前田早紀子、井上泰人
AI概要
【事案の概要】 中部電力株式会社の新入社員であった労働者(平成22年4月入社)が、三重支店営業部法人営業グループに配属され、省エネ提案等の業務に従事していたところ、入社約7か月後に自殺した事案である。労働者の母である原告は、労働者が過重な業務及び上司によるパワーハラスメントにより精神障害(適応障害)を発病して自殺に至ったとして、労災保険法に基づく遺族補償一時金の支給を請求した。しかし、津労働基準監督署長は業務による強い心理的負荷が認められないとして不支給処分をしたため、原告が同処分の取消しを求めて提訴した。労働者は配属後、クボタ松下案件の提案書作成、産業論文の執筆、技術振興センター案件、三井住友案件(蒸気配管図作成・熱損失計算)等の複数の業務を並行して担当し、平成22年10月28日頃に適応障害を発症したと認定された。なお、労働者は同年7月頃から自殺関連のウェブサイトを検索するなどしており、同年10月末に出勤しなくなった後、11月1日に練炭自殺しているところを発見された。 【争点】 本件自殺の業務起因性、特に業務の質的過重性が争点となった。原告は、新入社員に対して過大な業務が課され、上司のb課長から「おまえなんていらない」「こんなんで大卒か」等のパワーハラスメントがあり、支援体制も不十分であったとして、心理的負荷の強度は「強」であると主張した。被告は、各業務は新入社員のOJTとして適切な範囲であり、同僚からの支援体制も整っていたとして、心理的負荷は「強」に至らないと主張した。 【判旨】 裁判所は、ストレス−脆弱性理論に基づき、業務による心理的負荷が平均的労働者を基準として精神障害を発病させる程度に強度であるか否かを、厚生労働省の認定基準を参考にしつつ個別具体的に判断する枠組みを示した。その上で、各業務について以下のとおり評価した。クボタ松下案件及び産業論文については、基本的な案件であり困難な状況があったとは認められないとした。技術振興センター案件については、過去の提案書を参考に作成可能であり、休日出勤時のb課長の指導も業務指導の範囲内であるとして心理的負荷は「弱」とした。三井住友案件については、新入社員にとって比較的難易度が高く、スケジュールの遅れや中間報告時の客先からの指摘により一定の心理的負荷があったと認めつつも、上司らから必要な指導・補助があったことを踏まえ「中」にとどまるとした。b課長によるパワーハラスメントについては、同僚が直接見聞きしておらず、日常的に業務指導の範囲を逸脱した言動があったとは認められないとして「弱」と評価した。全体評価として心理的負荷は「中」にとどまり、業務起因性は認められないとして、原告の請求を棄却した。