所得税及び復興特別所得税更正処分等取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告らは、養母から相続により取得した東京都中央区所在の土地について、自らが代表取締役を務める会社との間で借地権設定契約を締結し、権利金合計約48億9200万円を受領した。原告らは、この権利金に係る所得を分離課税の長期譲渡所得として確定申告する際、租税特別措置法39条1項(相続財産に係る譲渡所得の取得費加算の特例)を適用し、取得費加算額を計算した。これに対し、江東西税務署長は、取得費加算額の計算の基礎となる「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」(措置令25条の16第1項2号)について、貸家建付地として評価された土地の相続税評価額に借地権割合90%を乗じた金額とすべきであるとして、所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。原告らは、国税不服審判所長に対する審査請求を経て、本件各処分の取消しを求めて提訴した。 【争点】 主な争点は3つある。第1に、取得費加算額の計算において、措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を、土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)に更に借地権割合90%を乗じた金額とすることの適否である。原告らは、貸家建付地の評価において既に借地権割合が考慮されており、更に借地権割合を乗じるのは借地権の二重評価であると主張した。第2に、相続税調査担当職員が所得税の税務代理権限を有しない税理士の面前で所得税に関する説明をしたことが守秘義務違反等に当たるか。第3に、更正処分の理由提示に不備があるかである。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。争点1について、借地権設定の対価に係る譲渡所得課税は、土地の利用権部分についてキャピタル・ゲインの清算をする趣旨であり、底地部分のキャピタル・ゲインは未実現であるとした。そして、貸家建付地評価で借地権割合を考慮するのは土地全体の評価のためであるのに対し、取得費加算額の算定で借地権割合を乗じるのは、評価された土地全体の額のうち譲渡した借地権に対応する部分を算定するためであって、両者はその目的を異にするから、借地権の二重評価には当たらないと判断した。平成26年度税制改正の経緯も踏まえ、被告の計算方式は本件特例の制度趣旨に適合すると認定した。争点2について、相続税額の変動に伴い所得税額も変動することは税理士にとって明らかな事項であり、守秘義務違反に直ちに該当するとは解し難く、仮に瑕疵があっても重大な違法には当たらないとした。争点3について、通知書の記載は処分の根拠事実と適用法規を十分に了知し得る内容であり、理由提示の不備は認められないと結論付けた。