AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社つくし工房)は、「フルハーネス型墜落制止用器具の上から着用できる反射標識帯を備えた安全チョッキ」に関する特許出願(特願2018-191750)について、4度の手続補正を経たものの拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を請求した。特許庁は、本願発明は引用文献1(安全帯の上に着用する衣服に関する公報)に記載された引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとして、特許法29条2項により特許を受けることができないとする審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴した。本願発明は、高所作業者がフルハーネス型墜落制止用器具を装着した上に安全チョッキを着用し、背面の通し穴からD環とランヤードを引き出せるようにファスナー付き通し穴を設けた構造のチョッキである。 【争点】 本件の争点は、本願発明の進歩性の有無であり、具体的には以下の3点である。(1)相違点1及び2の認定の誤りの有無(本願発明の「安全チョッキ」と引用発明の「ベスト型の上着」の認定が適切か)、(2)相違点1(D環とランヤードを引き出すための通し穴の構成及び着用手順に関する構成)の容易想到性、(3)相違点2(反射標識帯を肩部から裾部にかけて備えた安全チョッキである構成)の容易想到性である。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。相違点の認定について、「ベスト」と「チョッキ」は被服分野で同義であり、本件審決は衣服の形状・類型としてチョッキである点を一致点とする一方、本願発明が「安全チョッキ」である点は相違点2として適切に認定しており、誤りはないとした。相違点1については、引用発明の通し部もランヤードやフックを引き出すことが可能な形状・大きさであることが引用文献1の記載から認められ、実質的な相違点ではないとした審決の判断に誤りはないとした。仮に実質的な相違点であるとしても、引用文献2にフルハーネス型安全帯の上から衣服を着用した後に通し穴からハンガーフック等を引き出す手順が記載されていることから、着用手順の変更は当業者が容易になし得る選択にすぎないとした。フルハーネス型安全帯が出願時に周知でなかったとの原告の主張についても、出願前のリーフレットや公報の記載から、高所作業でフルハーネス型安全帯を使用することは広く知られていたと認定した。相違点2についても、高所作業用衣服に反射標識帯を設けることは周知であり、その配置も周知であるから、引用発明に周知技術を適用することは当業者が適宜なし得るとした。以上から、本件審決の進歩性の判断に誤りはないと結論づけた。