AI概要
【事案の概要】 本件は、レコード製作会社である原告ソニー・ミュージックレーベルズ及び原告エイベックス・エンタテインメントが、インターネット接続プロバイダ事業を営む被告ソニーネットワークコミュニケーションズに対し、発信者情報の開示を求めた事案である。原告ソニーは実演家Aが歌唱する楽曲を収録した商業用音楽CD「LOST IN PARADISE feat. B」を、原告エイベックスは実演家Cが歌唱する楽曲を収録した「仮面ライダーゼロワン 主題歌&挿入歌ベストソングコレクション」をそれぞれ発売し、レコード製作者としての送信可能化権(著作権法96条の2)を有していた。原告らは、BitTorrentネットワーク上のファイル流通を監視するシステム「P2P FINDER」による調査の結果、氏名不詳者が被告のインターネット接続サービスを経由して上記各レコードを複製したファイルを不特定多数がダウンロード可能な状態にしていたことが判明したとして、プロバイダ責任制限法(当時)4条1項に基づき、当該発信者の氏名・住所等の情報開示を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)原告らの送信可能化権が侵害されたことが明らかといえるか、(2)被告が開示関係役務提供者に当たるか、(3)原告らに発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるかの3点であった。特に争点(1)に関し、被告は、原告らがIPアドレスの特定に用いた監視システム「P2P FINDER」の技術的信用性に疑義があると主張し、送信可能化権侵害が明らかとはいえないと争った。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも認容した。争点(1)及び(2)について、証拠及び弁論の全趣旨から、氏名不詳者が被告のインターネット接続サービスを利用し、BitTorrentを用いて本件各レコードの複製ファイルを不特定多数の求めに応じ自動送信し得る状態に置いたと認定した。被告が主張するP2P FINDERの技術的信用性の疑義については、同システムがプロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会の技術部会による認定審査を受けていることを指摘し、技術的信用性を疑わせる事情は見当たらないとして退けた。また、使用許諾や権利制限事由等の違法性阻却事由も認められないとした。争点(3)については、原告らが氏名不詳者に対し損害賠償請求又は差止請求を行うために発信者情報の開示が必要であると認め、正当な理由があると判断した。