AI概要
【事案の概要】 本件は、「X線検査装置」に関する特許(特許第6569070号、請求項1〜4)について、特許庁が進歩性欠如を理由に特許取消決定をしたことに対し、特許権者である原告(株式会社システムスクエア)がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許の発明は、食品等の被測定物にX線を照射し、透過したX線の各光子のエネルギーを所定の閾値に照らして複数のエネルギー領域に弁別して検出することで、被測定物の物性によらず精度よく異物検査を行うX線検査装置に関するものである。特許庁は、本件発明が引用文献1(食品異物検査用X線装置に関する公開特許公報)に記載の引用発明1及び引用文献2(X線エネルギー分析イメージング装置に関する公開特許公報)に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたとして、特許法29条2項違反を理由に特許を取り消す決定をした。 【争点】 主な争点は、(1)本件決定における本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点の認定に誤りがあるか(取消事由1)、(2)相違点1(エネルギー閾値による弁別検出等の構成)の容易想到性判断に誤りがあるか(取消事由1)、(3)従属項である本件発明2〜4の進歩性判断に誤りがあるか(取消事由2)である。原告は、引用発明1は食品工場用の低コスト異物検査装置であるのに対し引用文献2技術事項は人体用の高コスト検査装置であって技術分野・解決課題が根本的に異なるから、両者を組み合わせる動機付けがなく阻害要因もある旨を主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。まず一致点及び相違点の認定について、構成要件中の一部の構成要素が引用発明と一致しないからといって直ちに当該構成要件全体が共通しないと認定すべきではなく、技術的に不分離の関係にあるなどの事情がない限り共通する構成要素は一致点として認定できるとし、本件決定の認定に誤りはないと判断した。次に相違点1の容易想到性について、引用文献2技術事項は人体用のみならず荷物中の禁制品検査にも用いられるX線検査装置であり、引用発明1と技術分野が関連すること、両者ともX線画像のコントラストを高めて検出対象を明確化するという共通の課題を有すること、被測定物中の外から見えない物体をX線画像で検出・検査するという作用・機能が共通することから、両者を組み合わせる強い動機付けがあるとした。原告主張の阻害要因についても、コストの多寡と技術分野は直結せず、製品製造現場用の装置であれば性能向上に意を払わないとはいえないとして退け、相違点1は容易に想到できると結論づけた。本件発明2〜4についても、独立の取消事由がないとして請求を棄却した。