特許権侵害差止請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「通信回線を用いた情報供給システム」に関する2件の特許権(特許第3701962号及び特許第3701963号)を有する一審原告(株式会社アイペックス)が、一審被告(イッツ・コミュニケーションズ株式会社)に対し、一審被告が提供する「インテリジェントホームシステム」と称するホームセキュリティ用情報供給システムが上記各特許権を侵害するとして、特許法102条3項に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審である。本件各特許は、インターネット経由で自宅等の監視端末にアクセスし、IPカメラ等の監視手段を通じて遠隔監視を行うシステムに関するもので、管理コンピュータ側に利用者IDとIPアドレスを対応付けた利用者データベースを備える点等を特徴とする。原審(東京地裁)は、IPカメラを使用した被告システムについて技術的範囲への属否を認め、約811万円の損害賠償を認容したが、一審原告は賠償額の増額を、一審被告は敗訴部分の全部取消しをそれぞれ求めて控訴した。なお、差止請求については一審原告が当審で訴えを取り下げたため、損害賠償請求のみが審理対象となった。 【争点】 主な争点は、(1)被告システムの各デバイス(IPカメラ、各種センサー、スマートロック、スマートライト、家電コントローラー)が本件各発明の技術的範囲に属するか(構成要件充足性)、(2)本件各発明に係る無効の抗弁(新規性・進歩性欠如、ダブルパテント、分割出願要件違反、サポート要件違反、実施可能要件違反、拡大先願違反等の計7つの無効理由)の成否、(3)損害額の算定であった。特に、「利用者データベース」の意義(IPアドレスがキャッシュメモリーに一時記憶される構成で足りるか)、「監視手段」の範囲(スマートロック等が該当するか)が大きく争われた。 【判旨】 知財高裁は、まず技術的範囲の属否について、「利用者データベース」はデータが登録される記憶媒体の種類や記憶の態様・方法等に制限はないと解し、被告システムにおいてIPアドレスがキャッシュメモリーに一時記憶される構成であっても構成要件を充足すると判断した。また、「監視手段」とは悪事や不都合なことが起こらないように見張るために用いられる機器を指すと解したうえで、スマートロックは施錠状態の監視に用いられるものとして「監視手段」に該当すると認めた。他方、スマートライト及び家電コントローラーは監視目的の機器とはいえないとして技術的範囲への属否を否定し、各種センサーについても原審同様に否定した。無効の抗弁については、7つの無効理由をいずれも排斥した。損害額については、特許法102条3項に基づき、IPカメラ又はスマートロックが選択された被告システムの売上高に相当割合の実施料率を乗じた1144万5674円に弁護士・弁理士費用200万円を加え、合計1344万5674円の損害賠償を認容した。原審がIPカメラのみを侵害対象としたのに対し、控訴審ではスマートロックも加えて賠償額を増額しており、一審原告の控訴を一部認容し、一審被告の控訴を棄却した。