損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 宗教法人オウム真理教の元信者である原告が、被告(産経新聞社)の発行する産経新聞に掲載された4本の記事により名誉を毀損されたとして、不法行為に基づく慰謝料等165万円の損害賠償及び謝罪広告の掲載を求めた事案である。原告は、地下鉄サリン事件等の容疑で平成7年から約17年間特別指名手配された後、平成24年6月に逮捕された。第1事件(地下鉄サリン事件)及び第2事件(VXガス事件)については不起訴処分を受け、第3事件(東京都庁小包爆弾事件)については一審で懲役5年の実刑判決を受けたものの、控訴審で逆転無罪となり、上告棄却により無罪が確定した。問題となった記事は、逮捕翌日の朝刊記事(本件記事(1))、同日の夕刊コラム(本件記事(2))、逮捕後の捜査状況に関する記事(本件記事(3))、及び控訴審無罪判決翌日の記事(本件記事(4))の4本である。 【争点】 主な争点は、(1)各記事の摘示事実の内容、(2)各記事による原告の社会的評価の低下の有無、(3)真実性又は真実相当性の抗弁の成否、(4)損害額、(5)謝罪広告の必要性である。特に、各記事が原告のサリン製造への客観的関与のみを摘示するものか、認識を含めた関与まで摘示するものかが中心的に争われた。被告は、記事が嫌疑段階の報道にとどまること、関連記事と併せて読めば原告の弁解内容も伝わること等を主張した。 【判旨】 裁判所は、記事ごとに摘示事実の内容を詳細に検討した。本件記事(1)については、同日の新聞全体の構成を踏まえると、一般読者は1面記事で原告の弁解内容を把握した上で読むのが自然であり、サリン製造への客観的関与の摘示にとどまると認定した。本件記事(2)については、夕刊のみを購入する読者も想定され、原告の弁解内容が前提知識になっていたとはいえないとして、サリン製造の認識を有しながら関与したことを前提とする意見・論評であると認定した。本件記事(3)については、原告宅から「サリン」と書かれたノートが押収された事実の摘示と認定した。本件記事(4)については、元捜査関係者のコメント自体の摘示にとどまり、原告が側近中の側近であったとの事実を摘示するものではないと判断した。 真実性・真実相当性の抗弁については、本件記事(1)は警視庁の記者会見内容等に依拠しており真実相当性が認められるとした。一方、本件記事(2)は原告のサリン製造の認識について真実性・真実相当性を認める証拠がないとした。本件記事(3)についても、取材で得られた情報はノートの押収場所が原告宅であることを裏付けるに足りず、真実性・真実相当性は認められないとした。 以上から、本件記事(2)及び(3)による名誉毀損の不法行為を認め、慰謝料として本件記事(2)につき10万円、本件記事(3)につき15万円、弁護士費用2万5000円の合計27万5000円の支払を命じた。謝罪広告については、記事掲載から相当年数が経過していること等を考慮し、必要性を否定した。