AI概要
【事案の概要】 本件は、「大面積ペロブスカイト膜の製造方法、ペロブスカイト太陽電池モジュール、並びにその製造方法」と題する特許出願について、拒絶査定不服審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求めた事案である。原告は、導電基板に前駆体溶液を数十秒供給してフィルムを形成し、そのフィルムを逆溶剤に浸漬するか赤外線で加熱することによって、面積25cm2〜10000cm2の大面積ペロブスカイト膜を製造する方法を発明したとして特許出願をしたが、拒絶査定を受け、不服審判を請求した。特許庁は、引用文献(ペロブスカイト太陽電池のロール方式による作製に関する論文等)に基づき、補正後の請求項1及び2に係る発明はいずれも進歩性を欠くとして審判請求を不成立とした。 【争点】 主な争点は以下の3点である。(1) 相違点2の認定の誤り:原告は、本件補正発明1のフィルムを「スロットダイコーティングしたフィルム」と限定解釈すべきであり、相違点2は「スロットダイコーティングしたフィルムを逆溶剤に浸漬すること」と認定すべきと主張した。(2) 相違点2の判断の誤り:原告は、引用発明1が1ステップ法に属するのに対し本件補正発明1は2ステップ法に属するとして、引用発明1に引用文献2記載の技術(溶剤導入高速結晶堆積法)を組み合わせる動機づけがないと主張した。(3) 相違点6の判断の誤り:原告は、引用発明2のペロブスカイト膜の面積(5×2.5cm2)と本件補正発明2の面積(25cm2〜10000cm2)には大きな差があり、単に製造装置を大きくすれば得られるものではないと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。争点(1)について、本件補正発明1の請求項1にはフィルムの形成方法について「スロットダイコーティング」との限定はなく、請求項3で別途その限定がされていることからも、請求項1にはそのような限定をしない趣旨と解されるとした。また、本件面積が25cm2のものも含むため、必ずしも大面積の製造方法のみに係るとはいえないとして、相違点2の認定に誤りはないと判断した。争点(2)について、引用文献2記載の溶剤導入高速結晶堆積法(FDC法)は1ステップ法に属し、引用発明1と同一の技術分野に属する上、技術思想においても共通するところがあるとした。さらに、加熱処理と逆溶剤への浸漬は互いに代替可能な手段であるから、引用発明1に本件技術を採用することに阻害要因はなく、当業者が容易に想到し得たと判断した。争点(3)について、引用発明2はスロットダイコーティングを採用するものであり、コーティング時間を長くすれば大面積の基板への塗布が可能であることに加え、引用文献1自体にスロットダイコーティングが大規模作製の第一候補である旨の記載があることから、当業者が容易に想到し得たと判断した。