著作権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、職業写真家である原告が、宗教法人である被告(貴船神社)に対し、著作権侵害に基づく差止め及び損害賠償を求めた事案である。原告は平成27年頃から、被告の広報担当者であったP2との個人的な親交を契機に、貴船神社の社殿・風景・行事等を撮影した写真(1033点)を無償で被告に提供し、被告はこれをウェブサイトやSNS等の広報活動に利用していた(以下「本件利用許諾」)。令和元年8月、P2が境内での飲酒を理由に降格・減給処分を受けて退職することになったことを知った原告は、被告代表者の対応に抗議し、同年9月13日付けメールで本件利用許諾を解約する旨を通知するとともに、同月末日までに全写真の削除等を要求した。原告はこの際、要求に応じなければ刑事告訴し被告代表者は逮捕となる旨を告げ、「これはオレの報復です」と述べた。被告が写真の削除に応じなかったため、原告は著作権(公衆送信権)侵害を主張し、差止め・抹消・廃棄及び損害賠償3009万円を請求した。 【争点】 1. 本件利用許諾に基づく利用許諾の終期(解約告知の効力と予告期間) 2. 差止め及び抹消・廃棄の必要性 3. 損害額(著作権法114条3項に基づく使用料相当額) 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件利用許諾について、原告が継続的に写真を撮影・提供し、被告がこれを広報に利用する一方、原告も一般人には認められない特別な構図での撮影が許可される等の利益を受けていた双方向的・複合的な合意であり、民法上の使用貸借の規定を単純に類推適用するのは相当でないと判断した。そして、本件利用許諾は双方の活動がその継続を前提として形成されており、長期間の継続が期待されていたものであるから、一方的に全写真の利用を直ちに禁止することは当事者に不測の損害を被らせるものとして原則許容されないとした。本件解約告知については、P2の退職は被告とP2との間の雇用問題であって本件利用許諾自体に関する信頼関係の破壊には当たらず、原告の真の目的が被告への報復であったことから、正当な理由があるとは認められないと判断した。もっとも、一方的な解約告知であっても合理的な予告期間を経れば終了し得ると解した上で、年間を通じた写真の再撮影や広報媒体の再構築に要する期間等を考慮し、予告期間は1年3か月(令和2年12月12日まで)が相当とした。被告はこの期間内にウェブサイト及びYouTubeから本件写真の掲載を停止しており、著作権侵害は認められないとして、差止め・損害賠償請求をいずれも棄却した。