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【事案の概要】 原告は、大阪府内の市街化区域に所在する2筆の農地(本件農地(1)・(2))の所有者である。本件農地は昭和20年頃から賃借人Cの父Dに賃貸され、Dの死亡後はCが賃借権を相続して耕作を続けていた。原告は、大阪府知事に対し、農地法18条1項に基づき、主位的に賃借人の信義違反(同条2項1号)、予備的にその他正当事由(同項6号)等を理由として、賃貸借契約の解除許可を申請した。大阪府知事は、同項6号の「その他正当の事由」に該当するとして、「賃借人に対し適正な離作料を支払うこと」を条件に許可処分を行った。本件は、原告がこの許可処分の取消し等を求めた行政訴訟である。なお、本件農地では固定資産税等の額が賃料(年額3万8000円)を大幅に上回る「逆ざや現象」が長年生じており、平成4年にはCが生産緑地地区指定への同意を拒否したため宅地並み課税の軽減を受けられなかった経緯がある。 【争点】 1. 賃借人Cの行為が農地法18条2項1号の「信義に反した行為」に該当するか(生産緑地指定への不同意、農地の一部を無断で工事用道路として使用させたこと、無断で小石混じりの土を搬入したこと、耕作放棄、無断転貸の有無) 2. 大阪府知事が「適正な離作料の支払」を条件として同項6号該当と判断したことの適法性(離作料を条件とすること自体の当否、及び具体的金額を明示しなかったことの当否) 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却又は却下した。争点1について、賃借人の各行為はいずれも賃貸借契約を継続することが客観的に不可能といえるほどの背信的行為には当たらないと判断した。特に、小石混じりの土の搬入については、Cが畑から田への転換を目的として水田整備の一環として行ったものであり、水田整備の一般的知見(心土中の石礫が基盤を強化する効果)とも整合すると認定した。また、原告側がCの追加搬土の申入れを、農地利用とは無関係な相続税の懸念を理由に拒否していた事情も指摘した。争点2について、逆ざや現象の長期継続、Cが年金生活者であり一定の金銭的補償のもと明渡しに応じる意向を示していたこと等を総合考慮し、離作料の支払を条件とする許可は合理的と判断した。金額の不明示についても、離作料の支払義務は許可処分から直接生じるものではなく当事者間の合意により生じること、地域慣行等を踏まえた交渉に委ねることが適切な場合もあること等から、裁量権の逸脱・濫用には当たらないとした。