特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「生体用水素ガス供給装置」に関する2つの特許権(特許第5091364号(本件特許1)及び特許第6667873号(本件特許2))を有する原告が、被告に対し、被告が製造販売する水素ガス供給装置(被告製品1及び被告製品2)が上記各特許権を侵害するとして、特許法100条1項・2項に基づく製造・販売等の差止め及び廃棄、並びに民法709条・特許法102条2項に基づく損害賠償金9130万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告の特許発明は、水の電気分解により陰極から発生する水素ガスを希釈用ガスで爆発限界(4vol%)未満に維持しながら生体に安全に供給する装置に関するものであり、電解室の内部と外部を隔膜で区画し、電極板を配置する構成を特徴としていた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品1が本件特許1の技術的範囲に属するか(特に構成要件1Aの充足性)、(2)被告製品2が本件特許2の技術的範囲に属するか(特に構成要件1A・2A・4Aの充足性)、(3)本件特許1に実施可能要件違反等の無効理由があるか、(4)本件特許2に実施可能要件違反等の無効理由があるか、であった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず、構成要件1Aの「電解室」について、隔膜による区画は内部と外部で水が連通しない完全な区画を意味すると解釈した。被告製品1は内タンクと外タンクで水が連通する構造であり、被告製品2も高分子膜の上側空間と下側空間で水が連通し被電解水入口が1つしかない構造であるため、いずれも構成要件1Aを充足しないと判断した。同様に、被告製品2は構成要件2A及び4Aも充足しないとされた。さらに裁判所は、念のため実施可能要件違反についても判断し、本件各明細書には固体高分子水電解の装置が記載されているところ、陽極側に被電解水が存在しない構成や電極が隔膜に接触していない構成では水の電気分解が技術的に不可能であるにもかかわらず、明細書にはそのような構成を含む記載がなされており、当業者が過度の試行錯誤なく実施できる程度の記載がないとして、本件各特許には実施可能要件(特許法36条4項1号)違反の無効理由があると判断した。