新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、印刷機械の製造・販売等を目的とする上場会社(債務者・東京機械製作所)の株式を市場内取引で急速に買い集め、株券等保有割合約40%を取得した投資会社ら(債権者・アジア開発キャピタルら)が、債務者の取締役会決議に基づく新株予約権の無償割当て(いわゆる買収防衛策の発動)の差止めを求めた仮処分事件である。債権者らは令和3年6月から債務者株式の市場内買付けを開始し、約3か月で保有割合を約40%まで引き上げた。これに対し債務者は、有事導入型の買収防衛策(本件対応方針)を導入し、債権者らに経営方針等の情報提供と買増し停止を求めたが、債権者らがこれに応じず買付けを継続したため、差別的行使条件・取得条項が付された新株予約権の無償割当て(本件対抗措置)を決定した。その後、債務者は株主意思確認のための臨時株主総会を開催し、債権者ら及び取締役の関係者を除く非利害関係株主(MoM要件)の約79%の賛成により対抗措置の発動が承認された。 【争点】 ①本件新株予約権無償割当てが著しく不公正な方法によるものか(会社法247条2号類推適用)、②本件新株予約権無償割当てが株主平等の原則に違反するか(同条1号類推適用)。特に、有事導入型の買収防衛策において、株主意思確認総会でMoM要件(買収者側と経営者側双方の議決権行使を制限する決議要件)を採用したことの適法性が争われた。 【判旨】 裁判所は、債権者らの申立てをいずれも却下した。争点①について、最高裁平成19年8月7日決定(ブルドックソース事件)の判断枠組みを踏襲しつつ、株主意思確認総会においてMoM要件が用いられた場合の判断手法を示した。すなわち、株主の一部の議決権行使を制限して株主総会決議がされた場合、その制限の趣旨や総会の具体的状況を踏まえて重大な瑕疵の有無を検討すべきであるとした。本件では、債権者らが買付期間・買付予定数等を明らかにしないまま急速に株式を買い集めた行為には「相応の強圧性」があり、一般株主が適切な判断のための十分な情報と時間を確保できない状況にあったと認定した。そのうえで、株主意思確認総会において非利害関係株主の約79%が対抗措置の発動を承認しており、総会手続にも正当性を失わせる重大な瑕疵は認められないとして、本件新株予約権無償割当てが経営支配権維持を主要目的とするものとは推認できないと判断した。争点②についても、株主平等原則の趣旨は新株予約権無償割当てにも及ぶとしつつ、株主意思確認総会の承認を経ていること、債権者らに不利益を回避する余地があったこと等を考慮し、衡平の理念に反し相当性を欠くとは認められないとした。