競業行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「GALLERY ART POINT」という商号を使用して東京都中央区で貸画廊を営む原告(元妻)と、同じ商号で貸画廊を営む被告B(元夫)及び被告会社との間の紛争である。原告とBは平成27年に婚姻し、Bが婚姻前から経営していた画廊の業務を原告もサポートしていたが、平成30年に別居を開始し、令和2年に離婚が確定した。別居後も両者は同一建物の同一区画を交互に使用して、いずれも同じ商号で貸画廊の営業を継続していた。 本訴において原告は、Bから画廊の営業譲渡を受けたと主張し、(1)営業譲渡契約に基づく競業行為の差止め、(2)原告商標権に基づく被告ら標章の使用差止め・損害賠償、(3)営業妨害行為の差止め・損害賠償を請求した。反訴においてBは、(1)原告が営業譲渡を受けた旨を公表したことが不正競争防止法上の営業誹謗行為に該当するとして損害賠償・差止め、(2)被告商標権に基づく原告標章の使用差止め、(3)ドメイン名の不正取得・使用の差止め等を請求した。 【争点】 主な争点は、(1)原告とBとの間で画廊の営業譲渡契約が成立したか否か、(2)原告の商標権行使が権利濫用に当たるか、(3)Bの営業妨害行為の有無、(4)原告による営業譲渡の公表が不正競争に該当するか、(5)被告商標権に基づく差止請求の可否、(6)ドメイン名の不正使用の有無である。 【判旨】 裁判所は、本訴請求の大部分を棄却し、反訴請求の主要部分を認容した。 営業譲渡契約の成否について、原告は800万円を対価とする営業譲渡契約書(甲4書面)の存在を主張したが、裁判所は、同書面におけるBの印章が日常業務用の三文判であり原告が接触可能であったこと、記載内容が当時のBの事業方針と整合しないこと、書面の保管・紛失・発見状況に関する原告の供述が不自然であること等を総合し、書面の真正な成立の推定を覆した上、営業譲渡契約の成立を否定した。 原告の商標権行使については、商号に化体した信用は本来Bに帰属するものであるとして、権利濫用に当たると判断した。 反訴請求については、原告がウェブサイト等で営業譲渡の事実を公表した行為は、Bの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布(不競法2条1項21号)に該当するとし、損害賠償128万3060円(逸失利益28万3060円、信用毀損による無形損害100万円)及び差止めを認容した。被告商標権1に基づく原告標章の使用差止め、「artpoint.jp」ドメイン名の保有・使用の差止めも認めた。 他方、原告の本訴請求のうち、Bによるチラシの持ち去り及び加湿器の水漏れによる損害計約4500円と、大学支援の展示会に関する営業妨害による損害36万2100円等の合計40万6560円(弁護士費用4万円を含む)の限度で不法行為に基づく損害賠償を認容した。