建造物侵入,窃盗未遂,現住建造物等放火被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2わ971
- 事件名
- 建造物侵入,窃盗未遂,現住建造物等放火被告事件
- 裁判所
- 札幌地方裁判所
- 裁判年月日
- 2021年11月1日
- 裁判官
- 石田寿一、古川善敬、北村規哲
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和2年10月20日未明、札幌市内の病院移転新築工事現場に網フェンスの隙間から侵入し、自動販売機の扉を工具等でこじ開けて現金を盗もうとしたが未遂に終わった(建造物侵入・窃盗未遂)。さらに同月29日未明、同市内の住宅街にある被害者方において、南東側壁面付近に設置されていた灯油タンクの銅管を手で折り曲げて破損させ、灯油を壁面や地面に漏出させた上、ライターの火で媒介物に点火して放火し、被害者方の外壁の一部を焼損させた(現住建造物等放火)。被害者方には当時住人がおり、住宅密集地での犯行であった。被告人には火力を用いた建造物損壊罪及び建造物等以外放火罪の累犯前科2犯があり、直近の刑の執行終了からわずか約9か月で本件に及んだ。被告人はいずれの犯行についても犯人性を争い、全面的に否認した。 【争点】 第1の建造物侵入・窃盗未遂及び第2の現住建造物等放火のいずれについても、被告人が犯人であるか(犯人性)が争点となった。第1の事件では、工事現場の防犯カメラに映った犯人と、近隣マンションの防犯カメラに映った被告人の同一性が問題となり、防犯カメラ画像解析の専門家による鑑定意見の信用性が中心的に争われた。専門家は、スーパーインポーズ法・形態学的検査法・人類学的計測検査法の3手法を用い、両肩の高さの不ぞろい、トレンデレンブルグ歩行とデュシャンヌ歩行という2種類の異常歩行の競合、身体各部位の比率の一致等から、被告人と犯人は同一人と推定されると結論づけた。第2の放火事件では、燃焼実験による炎の高さ、モルタル破裂音の時刻、灯油タンクの残量という3つの独立した観点から犯行時刻が午前1時1分30秒頃から4分頃と認定され、その直前の時間帯における被告人の行動との整合性、灯油が付着した軍手やライター等の所持品が検討された。 【判旨(量刑)】 裁判所は、第1の事件について、専門家の鑑定意見は科学的手法に基づく合理的なものとして信用でき、犯人と被告人の身体的特徴の一致及び犯行後の行動の整合性を総合して、被告人が犯人であると認定した。第2の放火事件についても、犯行時刻直前に被害者方付近から被害者方のある方向へ進行した行動、犯行後に現場から足早に離れた行動、灯油付着の軍手・ライター・ペンライトの所持、銅管を手で折り曲げて切断する知識の保有等を総合し、被告人以外の第三者が犯人である可能性は抽象的なものにとどまるとして、被告人の犯人性を認めた。量刑については、累犯前科2犯がありながら刑の執行終了後わずか約9か月で罪種がより深刻な現住建造物等放火に及んだ意思決定の悪質性、住宅密集地での深夜の犯行の危険性を重視し、焼損が外壁の一部にとどまり死傷者がなかったこと等を考慮してもなお同種事案の中でやや重い部類に位置付けられるとして、求刑懲役10年に対し、被告人を懲役7年に処した。