AI概要
【事案の概要】 本件は、商標の不使用を理由とする商標登録取消審判(商標法50条1項)に関する審決取消訴訟である。被告は、第3類「せっけん類、化粧品、香料類」を指定商品とする登録商標「三相乳化」の商標権者であった。原告は、被告の指定商品のうち「化粧品」について、「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術」(特定乳化技術)を用いて製造した化粧品を除く化粧品(本件請求商品)の範囲で、不使用による取消審判を請求した。同時に、特定乳化技術を用いて製造した化粧品についても別の取消審判が請求され、指定商品全体が6つに分割されて同日に審判請求がなされた。特許庁は、被告がパンフレットやウェブページで本件商標を付した「スキンミルク」を広告していたことを認め、本件審判請求を不成立とする審決をした。原告はこれを不服として審決の取消しを求めた。 【争点】 1. 商標法50条2項の立証責任の解釈として、被告は使用商品が特定乳化技術を用いて製造した化粧品ではないことまで立証する必要があるか。 2. 被告の使用商品(スキンミルク)が本件請求商品の範ちゅうに属する商品であるか。 【判旨】 請求棄却。知的財産高等裁判所は、以下のとおり判断した。 第一に、商標法50条2項に照らし、本件請求商品についての使用の立証責任は被告にあるとしつつも、本件審判請求と、特定乳化技術を用いて製造した化粧品を対象とする「対の審判請求」を通じてみると、被告は指定商品「化粧品」についての使用を立証すれば足りるとした。使用商品がいずれの範ちゅうに含まれるか明確でないことを理由にいずれの請求も成立すると判断することは許されず、少なくとも一方は成り立たない関係にあるとした。 第二に、対の審判請求について取消審決が確定している本件では、被告の使用に係る化粧品が特定乳化技術を用いて製造したものか否か不明であっても、特定乳化技術を用いて製造したものではないと推認するのが相当であるとした。加えて、パンフレット等に「ナノ粒子の原料なども用いておりません」との記載があることは、この推認に沿う事実であるとした。 また、裁判所は、審判請求人が任意に付した製造方法に係る特定について、商標権者に自らの製造方法を開示して立証しない限り取消しを免れないとすることは過度の負担であり、信義誠実の原則に照らしても原告の主張は採用できないと判示した。