四国電力伊方原発3号炉運転差止仮処分命令申立事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 広島市、尾道市及び松山市に居住する債権者らが、四国電力(債務者)が設置・運転する伊方発電所3号炉(加圧水型原子炉、定格電気出力89万キロワット)について、特に地震に対する安全性を欠いており、運転中に重大事故が発生して大量の放射性物質が放出される具体的危険があるとして、人格権に基づく妨害予防請求権を被保全権利として、同原子炉の運転差止めを求める仮処分命令を申し立てた事案である。本件原子炉は平成6年に営業運転を開始し、福島第一原発事故後の新規制基準の下で平成27年に原子力規制委員会の設置変更許可を受け、平成28年に運転を再開していた。なお、本件は同一当事者間の第2次仮処分申立事件であり、先行する第1次仮処分事件は既に却下が確定していた。 【争点】 1. 司法審査の在り方(主張・疎明責任の所在) 2. 本件原子炉施設の地震に対する安全性(基準地震動を超える地震が発生する具体的危険の有無) 3. 保全の必要性 【判旨】 申立てをいずれも却下した。争点1について、裁判所は、原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという枠組みの司法審査は設置変更許可処分の取消しを求める抗告訴訟において採用されるべきものであり、民事保全事件では、基準地震動を上回る地震が発生する具体的危険という被保全権利の要件事実についての主張・疎明責任は債権者らが負うべきであるとした。証拠の偏在や被害の甚大性を理由とする疎明責任の転換も相当でないと判断した。争点2について、ある地点で観測される地震動は震源特性・伝播特性・増幅特性の組み合わせで構成されるため、他の地点で観測された最大加速度の絶対値をそのまま本件発電所に当てはめることはできず、各特性の補正が不可欠であるとした上で、債権者らが挙げた全国各地の高い加速度の観測記録、過去の原発における基準地震動超過事例、建築基準法の耐震基準や大手ハウスメーカーの住宅の耐震性能との比較等は、いずれも本件発電所の解放基盤表面における各種特性への補正を欠いており、具体的危険の疎明として不十分であると判断した。また、基準地震動の年超過確率が1万年から100万年に1回程度とされる点についても、絶対安全でなければ原子力を一切用いるべきでないとすることは社会通念として確立していないとした。争点3についても、被保全権利が認められたとしても、本案判決の確定を待てないほどの著しい損害や急迫の危険は疎明されていないとして、保全の必要性を否定した。