特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3ネ10043
- 事件名
- 特許権侵害差止等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2021年11月11日
- 裁判官
- 本吉弘行
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、「2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロプロペン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンまたは2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む組成物」とする発明に係る特許(特許第5701205号)の特許権者である控訴人(外国法人)が、被控訴人に対し、被控訴人の製品が本件特許権を侵害すると主張して、当該製品の生産・譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに、損害賠償として1億円及び遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。本件特許は、低地球温暖化係数の冷媒化合物であるHFO-1234yfを主成分とし、これにHFO-1243zf及びHFC-245cbを少量含む組成物に関するものである。原審は、本件特許に係る特許請求の範囲の補正(本件補正)が特許法17条の2第3項に違反し、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。 【争点】 主たる争点は、本件補正が特許法17条の2第3項の補正要件(新規事項の追加禁止)に違反するか否かである。具体的には、出願当初の明細書等に多数の化合物が列記されている中から、HFO-1234yfに加えてHFO-1243zf及びHFC-245cbを合わせてゼロ重量パーセント超1重量パーセント未満含むとの構成に補正することが、当初明細書等に記載した事項の範囲内といえるかが問題となった。控訴人は、沸点の近い化合物を組み合わせることの技術的合理性や、当初明細書の実施例における記載を根拠に、本件補正は新規事項の追加に当たらないと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、控訴棄却の判決をした。裁判所は、当初明細書等の全ての記載を総合して導かれる技術的事項は、低地球温暖化係数の化合物であるHFO-1234yfを調製する際に不純物や副反応物が追加の化合物として少量存在し得るという点にとどまると認定した。その上で、控訴人が援用する実施例の表5・表6には、HFO-1243zfがHFC-245cbと合わせて1重量パーセント未満含まれていることは明らかでなく、表2(パートA)の実施例でも両化合物を合わせて1重量パーセント未満含む組成物は開示されていないとした。また、控訴人が主張する共沸組成物や低コストで有益な組成物という観点は当初明細書に記載も示唆もなく、このような記載のない観点からの補正は新たな技術的事項の導入であり新規事項の追加にほかならないと判断した。以上から、本件補正は新規事項追加の禁止に違反し、本件特許は無効にされるべきものであるとして、原判決の判断を維持した。