特許権侵害差止請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人は、発明の名称を「含硫化合物と微量金属元素を含む輸液製剤」とする特許権(物及び方法の発明)を有する製薬会社である。控訴人は、輸液製剤の製造販売業者である被控訴人エイワイファーマ及び被控訴人陽進堂に対し、被控訴人らが製造・販売する輸液製剤(被控訴人製品)が上記特許の請求項1・2の技術的範囲に属する(直接侵害)とともに、請求項10・11の保存安定化方法を使用し、同方法にのみ使用する製品を製造・販売している(間接侵害)として、特許法100条1項・2項及び101条4号に基づき、被控訴人製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めた。本件特許の発明は、含硫アミノ酸を含む溶液と微量金属元素(銅等)を複室輸液容器で保存する際、微量金属元素収容容器を含硫アミノ酸溶液とは別の室に収納することで微量金属元素の安定性を確保するというものである。原審(東京地裁)は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。控訴人は当審で均等侵害の主張を予備的に追加した。 【争点】 (1) 被控訴人製品の小室Tが特許発明の「外部からの押圧によって連通可能な隔壁手段で区画されている複数の室」の構成を備えるか、(2) 被控訴人製品が「室に微量金属元素収容容器が収納」されている構成を備えるか、(3) 「熱可塑性樹脂フィルム製の袋」を備えるか、(4) 「複室輸液製剤」の構成を備えるか、(5) サポート要件違反の有無、(7)(8) 進歩性欠如の有無、(9) 実施可能要件違反の有無、(10) 均等侵害の成否。中心的争点は、被控訴人製品の小室Tにおける外側樹脂フィルムで構成される空間(本件小室T)が特許発明の「室」に当たるか、及び「室」が「連通可能」であることを要するかであった。 【判旨】 知財高裁は原判決を取り消し、控訴人の請求をいずれも認容した。まず裁判所は、特許発明の「室」とは、輸液容器全体の構成の中で基礎となる一連の部材によって構成される空間であり、輸液を他の輸液と分離して収容しておくための仕切られた相対的に大きな空間をいうと解した。被控訴人製品の小室Tについては、外側の樹脂フィルムによって構成される空間(本件小室T)が「室」に当たると認定した。もっとも、請求項1・2では「室」が「外部からの押圧によって連通可能な」ことが要件とされているところ、被控訴人製品では連通時にも本件小室Tに輸液が通じない構成であるため、構成要件1A・2Aを充足しないとした。一方、請求項10・11(保存安定化方法)では「連通可能」は要件とされておらず、被控訴人方法は構成要件10A・11A、10C・11C、10D・11Dをいずれも充足すると判断した。その上で、被控訴人らの主張するサポート要件違反、進歩性欠如及び実施可能要件違反の各無効の抗弁をいずれも退け、被控訴人製品は本件訂正発明10・11の保存安定化方法の使用にのみ用いる物であり、特許法101条4号の間接侵害に当たるとして、被控訴人製品の製造販売等の差止め及び廃棄を命じた。