損害賠償等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 一審原告ら(夫婦)は、一審被告(静岡新聞社)が発行する静岡新聞の平成30年7月5日付け朝刊の記事(本件記事①)において、覚せい剤及び大麻の営利目的所持の被疑事実で逮捕された一審原告らの氏名、年齢、職業、国籍に加え、住所を町名だけでなく地番まで掲載したことがプライバシー権の侵害に当たるとして、また、同月6日付け朝刊の記事(本件記事②)において一審原告らが薬物密売グループのリーダーであるかのような記載をしたことが名誉毀損に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料等各330万円)及び謝罪文の新聞掲載を求めた事案である。原審は、本件記事①によるプライバシー権侵害を認め、各33万円の慰謝料を認容したが、その余の請求を棄却したため、双方が控訴した。 【争点】 1. 本件記事①が一審原告らのプライバシーを違法に侵害するか(住所の地番まで掲載したことの違法性) 2. 本件記事②につき名誉毀損の違法性阻却事由及び故意・過失の有無 【判旨】 控訴審は、一審原告らの請求をいずれも棄却し、原判決の一審被告敗訴部分を取り消した(一審原告ら全面敗訴)。 争点1について、裁判所は、被疑者の住所は逮捕事実とともに公表されたくないと考えることが自然であり、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるとしつつ、プライバシーの侵害の成否は、事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由との比較衡量によって判断すべきであるとした。その上で、本件記事①は覚せい剤及び大麻の営利目的所持という重大犯罪の逮捕報道であり、被疑者の特定として氏名、年齢、職業、国籍及び住所という基本的要素のみを記載したものであって、重要な公益目的に基づくものと認めた。住所の地番の記載についても、被疑者特定の明確化や周辺地域の風評被害防止の効果がある一方、地番の有無による私生活上の平穏への影響に格段の違いがあるとは必ずしもいえないとし、報道機関の方針も一定でなく、逮捕報道時に地番を公表することが一律に許されないとする社会通念はないとして、プライバシー侵害による不法行為の成立を否定した。 争点2について、原審の判断を維持し、名誉毀損の違法性阻却事由が認められるとした。