特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「シート貼付構造体及びシート貼付構造体を用いて保護シートを貼付する貼付方法」に関する特許第5547792号の特許権者である原告が、被告に対し、被告がスマートフォン向け液晶保護フィルム(被告各製品)を製造・販売等する行為が原告の特許権を侵害すると主張して、特許法100条1項に基づく被告各製品の製造・販売・販売の申出の差止め、同条2項に基づく被告各製品の廃棄、及び特許法102条3項に基づく損害賠償金4億200万円(損害金4億円及び弁護士費用分の合計の一部請求)の支払を求めた事案である。 本件特許発明は、スマートフォン等の装置の画面に保護シートを貼り付ける際、剥離シートに分離ラインを介した第1剥離部と第2剥離部を設け、第1剥離部に1箇所の仮止部(クイックスコープ)を備えることで、保護シートの位置ずれを低減する構造に関するものである。被告は被告各製品を家電量販店やインターネット通販サイト等を通じて販売しており、被告補助参加人が被告各製品の大部分を製造していた。 【争点】 (1) 被告各製品が本件特許発明1及び3の技術的範囲に属するか(構成要件C「延出部」及び構成要件D・E「仮止部」の充足性) (2) 被告各製品を用いた貼付方法が本件特許発明6の技術的範囲に属するか(構成要件O「共に」の充足性) (3) 無効の抗弁の成否(乙1公報等を主引用例とする進歩性欠如、明確性違反、サポート要件違反等) (4) 損害額(特許法102条3項に基づく実施料相当額の算定方法及び料率) (5) 差止請求及び廃棄請求の当否 【判旨】 一部認容。裁判所は、まず構成要件C「延出部」について、特許請求の範囲の文言上、第1剥離部及び第2剥離部から保護シートの外側に延びた部位をいうと解釈し、被告らが主張する水平方向に引っ張る構造に限定する解釈を退け、被告各製品の余白部分は「延出部」に該当すると判断した。構成要件D・Eの「仮止部」についても、被告らの限定解釈を退け、被告各製品のクイックスコープが「仮止部」に該当するとして、被告各製品は本件特許発明1及び3の技術的範囲に属すると認定した。 他方、本件特許発明6については、構成要件Oの「共に」は、第1剥離部を保護シートから剥離する事象、仮止部が装置表面から剥離する事象及び保護シートが装置表面に貼付される事象が同時に生じることを規定するものと解釈し、被告各製品では下部はく離フィルムをめくり上げてクイックスコープを先に剥離させた後に引っ張る行為を行うため、これらの事象が同時に生じるとは認められないとして、構成要件Oを充足しないと判断した。 無効の抗弁については、乙1公報ほか複数の公報を主引用例とする進歩性欠如の主張をいずれも排斥し、サポート要件違反等の主張も退けた。 損害額については、特許法102条3項により、リベート控除後の被告の売上高に実施料率5%を乗じて算定し、弁護士費用を加えた合計7116万8343円を認容した。差止請求については、被告各製品の販売・販売の申出の差止め及び廃棄を認めたが、被告は製造を行っていなかったとして製造の差止めは棄却した。